要約
輸出等のかんしょ輸送中における腐敗防止方策を示す標準作業手順書である。本標準作業手順書に記載された技術の導入により、かんしょ輸送中の腐敗を防止し、国産かんしょの輸出を安定化して輸出拡大に貢献することが期待できる。
- キーワード : かんしょ、輸出、輸送、腐敗、かび
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・畑作物・野菜栽培グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
日本産のかんしょは高品質で食味に優れるため近年輸出が増加している。一方、特に冬期の海上輸送においてかんしょの腐敗が多く発生しており、経済的損失およびフードロスが大きな問題となっている。そこで、かんしょの貯蔵~出荷工程における病原菌の感染を防ぎ、輸送中の腐敗を防止するための方策を取りまとめた標準作業手順書を作成して、生産者、輸出事業者等に向けた普及活動に活用する。
成果の内容・特徴
- 本標準作業手順書(図1)は、輸送中のかんしょにおける腐敗問題の現状、腐敗防止方策の解説、導入事例の紹介を主な内容としている。
- 輸送中におけるかんしょ腐敗の主な要因は軟腐病や青かび病等の病害であり、ハンドリングや洗浄、調製等でかんしょに付く傷から菌が感染して発症する(図2)。
- 本標準作業手順書では、かんしょに傷を付けない丁寧なハンドリングの徹底や、洗浄や調製でかんしょに付く傷からの菌感染を防止するための洗浄調製後の高温キュアリング等の腐敗防止方策について、具体的な実施条件やポイントを生産者や指導者向けに取りまとめている(図2)(キュアリング:かんしょを一定の温度・湿度条件下に置くことで、傷や表皮の下にコルク層を形成させて菌の侵入を防止する技術)。
- 上記の腐敗防止方策の導入により、冬期におけるかんしょ生産法人から香港への輸出時に発生する腐敗を低く抑制できることが実証されている(図3)。
普及のための参考情報
- 普及対象 : かんしょ生産者(法人)、かんしょ輸出事業者、運輸・運送事業者、普及指導機関。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : かんしょ生産地(実績:宮城県1法人、鹿児島県1法人)。
- その他 : 本標準作業手順書は、国内の生産者(法人)や事業者が国内で生産するかんしょに対して技術を使用する場合を主に想定して配布することとし、農研機構との間で標準作業手順書の利用に関する誓約書を取り交わした後に配布する。配布の手続きは[その他]のリンクから参照できるWebページに掲載されている。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(戦略的スマート農業技術等の開発・改良)
- 研究期間 : 2019~2023年度
- 研究担当者 : 西場洋一、菅原晃美、井上博喜、森脇丈治
- 発表論文等 : 農研機構(2023)「輸送中のかんしょに対する腐敗防止方策標準作業手順書」
(2023年11月6日)