収量が高い暖地向け大豆新品種「そらみのり」

要約

大豆新品種「そらみのり」は難裂莢性を備え、「フクユタカ」と比較して3割程度多収である。「フクユタカ」のへその色が"淡褐"であるのに対し、「そらみのり」は"黄"であり、裂皮の発生が少なく子実の外観品質に優れる。成熟期は「フクユタカ」よりも1週間程度晩生である。

  • キーワード : 大豆、難裂莢性、多収、外観品質
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地水田輪作研究領域・作物育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

大豆の自給率は食品用に限っても2割程度で、需要の多くを輸入に依存しているため、食料安全保障の観点から自給率向上は喫緊の課題である。日本品種の単収は約160kg/10aと低く、多収品種の育成や栽培技術の改善等による単収の向上と生産コストの低減で、国産大豆の増産が望まれている。一方、米国品種の単収は日本の約2倍であるが、主に搾油用で国産大豆の主用途である豆腐の加工適性に影響を及ぼす粗タンパク含有率が一般的に低い傾向にある。そこで、収量が高い米国品種と加工適性が高い日本品種との交配から、豆腐への加工に利用でき、国産大豆への置き換えに貢献できる多収品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「九州148号」を種子親、米国品種「Santee」を花粉親とする人工交配から育成された品種である。
  • 九州地域の成熟期は "やや晩"で、「フクユタカ」よりも1週間程度晩生である(表1)。茎の長さは「フクユタカ」より長く(表1、図1)、倒伏程度は「フクユタカ」と同程度である(表1)。子実重は「フクユタカ」より標準播種(7月播種)で4割程度、早期播種(6月播種)で2割程度多収である(表1)。百粒重は「フクユタカ」よりやや軽い(表1)が、へその色が「フクユタカ」の"淡褐"と異なり"黄"であり、裂皮が少なく子実の品質が高い(図1)。
  • 九州~東海地域の生産者圃場で行った現地実証試験では、「フクユタカ」より平均で4割程度多収となる(表2)。
  • 「フクユタカ」は葉焼病に"感受性"であるのに対し、「そらみのり」は"抵抗性"であり、ダイズモザイクウイルス抵抗性については、「フクユタカ」も「そらみのり」も、A、B系統に抵抗性であるが、A2、C、D、E系統には感受性である(表1)。
  • 粗タンパク含有率は「フクユタカ」と同等で"やや高"に分類され、豆腐加工適性試験の結果は、豆乳抽出率は「フクユタカ」と同等、豆腐の破断強度はやや低い(表1、3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 大豆生産者、豆腐および納豆等の加工事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 九州~東海地域を中心とする西日本地域で1,000ha程度の普及を見込む。
  • その他 : 立枯性病害の蔓延を防ぐため、過度な連作を避け、適切な輪作を行うとともに、明渠および暗渠等の排水対策、農薬の種子塗抹処理を確実に実施する。また、やや倒伏に弱いため、過度な早播や密植は避ける。

具体的データ

表1 「そらみのり」の育成地における試験成績,図1 育成地における「そらみのり」の草本と子実 (2022年),表2 現地実証試験成績,表3 「そらみのり」の豆腐加工適性試験成績

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(国際競争力強化技術開発プロジェクト:輸出促進のための新技術・新品種開発)
  • 研究期間 : 2013~2023年度
  • 研究担当者 : 大木信彦、高橋将一、高橋幹、河野雄飛
  • 発表論文等 : 大木ら「そらみのり」品種登録出願公表第36797号(2023年8月10日)