要約
エコフィードとエコフィード牛のフードチェーンの確立のためには、食品加工業者との連携、エコフィード利用のアピール、販路の確保が重要であるとともに、生産から販売まで一貫した情報収集と情報共有が必要である。
- キーワード : エコフィード、肉用牛、フードチェーン
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畜産研究領域・肉用牛生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
エコフィード(eco-feed)とは、食品残さや食品製造副産物、規格外農産物等の未利用資源を利用して製造された飼料である。草食動物である牛用のエコフィードの特徴は植物性原料を用いていることであり、雑食性である豚や鶏用のエコフィードとの最も大きな違いである。近年の肉用牛生産は、飼料価格高騰、低い飼料自給率のみならず、環境への負荷を問題視されるなど、厳しい状況にある。このような状況のもと、肉用牛生産において、エコフィードを活用する取り組みに注目が集まっている。エコフィード飼養牛(以下エコフィード牛)のフードチェーンの確立は、飼料自給率向上や循環型社会の構築に貢献し、社会的意義が大きい。そこで、エコフィード並びにエコフィード牛のフードチェーンを構築している先進事例について調査を実施し、エコフィード牛のフードチェーンの課題を解明するとともに、エコフィードとエコフィード牛のフードチェーンを確立するための要件を示す。
成果の内容・特徴
- エコフィードまたはエコフィード牛のフードチェーンが確立されている4事例を取り上げた。
- 肉用牛用のエコフィードは、焼酎廃液、オリーブ搾油粕、ワイン用ブドウ搾粕、大豆粕、ビール粕、ウイスキーソリュブル等、農産物加工の結果生じる副産物を用いる傾向がある(表1)。エコフィード原料を継続的に確保するためには、生産活動の結果このような副産物が生じる企業との連携が重要である。
- 肉用牛用エコフィードの開発は、エコフィード原料提供企業の関連会社が他産業と連携して行うケース(図1)、肥育農家が単独で行うケース(図2、図3上半分)、肥育農家が複数集まって行うケースが見られた(図3下半分)。
- エコフィードの利用を付加価値としてアピールしている事例2、3、4では、生産者価格や市場価格が同種の一般的な牛肉よりも高い(表1)。エコフィード牛が高価で取引されることの周知により、エコフィードを取り入れる肥育農家が増加すると考えられる。
- エコフィード牛の販路については、卸売会社を経由するケースと、実需者と直接取引するケースが見られた。さらに事例2では、生産者から卸売業者までが参画しているオリーブ牛振興会で、エコフィード牛の生産から販売に関する情報共有がなされていた。事例2は県全体でエコフィードの利用が進んでおり、エコフィードの利用拡大を目指すためには、生産から販売まで一貫した情報収集と情報共有が必要であろう。
- 事例1では焼酎廃液の全量をエコフィード化する体制づくり、事例2ではエコフィード製造量拡大のための体制づくり、事例3ではエコフィード原料の運搬が課題であり、エコフィード製造体制に課題が生じがちであることを示唆している。事例4ではエコフィード牛肉の供給体制の確立が課題であり、エコフィード牛の出口をいかに確保するかが重要な課題となる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、肉用牛生産者・加工業者・販売業者等のステークホルダー、行政・普及機関の担当者、研究者等が活用できる。
- エコフィード原料は地域によって多様であるため、原料に応じて開発を進める必要があるとともに、先進事例で得られた知見を後発事例と共有する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : その他外部資金(農畜産業振興機構 畜産関係学術研究委託調査)
- 研究期間 : 2022年度
- 研究担当者 : 大西千絵、服部明彦
- 発表論文等 :