サツマイモ基腐病に強い抵抗性を持つ青果用かんしょ新品種「べにひなた」

要約

「べにひなた」はサツマイモ基腐病に対する抵抗性が優れる青果用のかんしょ品種である。上いも収量は「べにはるか」並みで、外観に優れ、食味の良いホクホクとした肉質である。基腐病の影響により抵抗性品種の作付けが進む南九州にて普及が見込まれる。

  • キーワード : かんしょ、サツマイモ基腐病、青果用、抵抗性品種
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

南九州では、2018年の秋にサツマイモ基腐病 (以下、基腐病) の発生が国内で初めて確認されて以来、基腐病の克服が大きな課題となっている。従来作付けされてきた主要品種の多くは基腐病に弱く、南九州のサツマイモ産地では抵抗性品種の導入が進んでいる。青果用品種については「高系14号」および「べにはるか」がいずれも基腐病に弱く、それまで関東で作付けされてきた「べにまさり」が "やや強" の抵抗性を有することが明らかになってからは、「べにまさり」の作付けが広がっている。しかしながら青果用抵抗性品種は依然として限られている状況であり、新しい抵抗性品種の開発が強く求められている。そこで本研究では、新たな青果用抵抗性品種の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 「べにひなた」は、多収で良食味の「べにはるか」を母、高でん粉の「九系09178-1」を父とする交配集団から選抜した品種である。
  • 塊根の表皮の主な色は"紫赤"で肉の主な色は"淡黄白"、外観は"やや上"である (図1)。葉身の形は"三角形"で、葉身の裏面のアントシアニン着色の大きさは"小"、強弱は"中"である(表1)。
  • 基腐病抵抗性は"強"であり、"やや弱"の「高系14号」や"弱"の「べにはるか」に比べ格段に優れる (図2)。
  • 育成地における上いも重は、標準生分解性黒マルチ栽培および早掘生分解性黒マルチ栽培のいずれも「べにはるか」並みである (表1)。
  • 蒸しいもの肉色は"淡黄白"で肉質は"中"、食味は"やや上"、甘さの指標となるブリックスは「高系14号」と「べにはるか」の中間の値を示す。貯蔵に伴う肉質の変化が小さいことから、加工原料としての品質の安定性も期待できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 南九州の青果用サツマイモ産地への普及を見込む。
  • 基腐病には強い抵抗性があるものの全く罹病しないわけではないため、『サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策 (令和4年度版)』(農研機構、2023年) を参照し、種いもは健全圃場から採取するほか、圃場の排水対策や発病株の見廻り、残渣処理といった基本的な防除対策を実施する。
  • サツマイモ黒斑病に弱いため、発生地帯では栽培を避ける。

具体的データ

表1 特性,表2 蒸しいも品質,図1 「べにひなた」の塊根,図2 サツマイモ基腐病抵抗性

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省 (イノベーション創出強化研究推進事業、国際競争力強化技術開発プロジェクト)
  • 研究期間 : 2014~2023年度
  • 研究担当者 : 川田ゆかり、小林晃、境垣内岳雄、末松恵祐、甲斐由美、境哲文、高畑康浩
  • 発表論文等 : 小林ら「べにひなた」品種登録出願公表第36661号(2023年6月8日)