菓子加工に適する多収のカンショ新品種「みやあかり」

要約

「みやあかり」は、肉色が濃い黄色の菓子加工用カンショ品種である。上いも収量は西日本で広く栽培される食用品種である「高系14号」より高い。また、「みやあかり」を用いたペースト・カット加工品は色調や風味が良く評価が高い。

  • キーワード : カンショ、多収、菓子加工、ペースト、カット品
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

西日本を中心に栽培されている「高系14号」は、食味が優れることや貯蔵中における肉質の変化(粘質化)が小さいことから青果用および加工食品用として利用されている。一方で、収量はやや少なく塊根の形が乱れやすいこと、サツマイモネコブセンチュウに弱いことなど欠点も多い。また、近年では「べにはるか」が青果用として生産量を伸ばしているが、貯蔵中の肉質変化が大きいことや塊根の肉色の黄色味が薄いことから、ペースト等の加工向け用途への利用は限定的である。そのため、「高系14号」や「べにはるか」に代わるような、多収で優れた加工適性を有する新品種を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「みやあかり」は、食味が良く調理後黒変がやや少ない「九系05001-1」(母)と外観および皮色が優れる「関東130号」(父)を2010年に交配し選抜した品種である。
  • いもの形状は"卵形"で、表皮の主な色は"赤"、肉の主な色は"黄"である。条溝は"無~微"、皮脈は"無"、裂開は"微"で、「高系14号」よりも外観が優れる(図1、表1)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は"強"、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性およびサツマイモ基腐病抵抗性は"やや弱"である(表1)。
  • 標準栽培および早掘栽培において、上いも収量は「高系14号」より優れる(表2)。蒸しいもの肉質は"中"であり、肉色は"黄"である。蒸しいもの食味評価は、早掘栽培では「高系14号」と同程度の"中"であるが、標準栽培では "やや上"であり「高系14号」を上回る(表2)。
  • 「みやあかり」の加工品(ペースト・皮付ダイス)は色調および風味の評価が高く、加工適性が「高系14号」より優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 主に宮崎県での栽培が見込まれている。
  • サツマイモ基腐病にやや弱いため、本病多発地帯での栽培は避け、発生地帯では定期巡回による初期発病株の抜き取りや薬剤散布などによる防除に努める。また、サツマイモ基腐病が発生した圃場からは苗および種いもを採種しない。

具体的データ

図1 「みやあかり」の塊根,表1 いもの形態、生態的特性および病虫害抵抗性(2015年~2022年),表2 育成地における収量性および蒸しいもの特性(標準黒マルチ栽培2015年~2022年、早掘黒マルチ栽培2019年および2021年),表3 菓子加工の適性評価 (かんしょ品質評価研究会、2016年~2020年)

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業)
  • 研究期間 : 2010~2022年度
  • 研究担当者 : 末松恵祐、甲斐由美、小林晃、境哲文、境垣内岳雄、吉永優、高畑康浩、川田ゆかり、片山健二、藤田敏郎
  • 発表論文等 : 甲斐ら「みやあかり」品種登録出願公表第36751号(2023年8月22日)