肉色がオレンジ色の焼酎原料用カンショ新品種「はなあかね」

要約

肉色がオレンジ色のカンショを原料とする芋焼酎は、「コガネセンガン」を原料とする一般的な焼酎とは異なるフルーティーな香りや味わいを有する。橙肉色新品種「はなあかね」は従来品種「タマアカネ」に比べてでん粉歩留と萌芽性に優れ、より華やかな香りの焼酎ができる。

  • キーワード : カンショ、芋焼酎、華やかな香り、でん粉歩留、萌芽性
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

芋焼酎は、飲みやすいマイルドな麦焼酎とは対照的に、香りや味の個性の強さが特徴である。芋焼酎の各銘柄の特色は原料とするカンショの品種によって大きく異なり、特に肉色が"橙"や"紫"の品種は、特有の香気成分を生み出し、多様な嗜好性に応える芋焼酎を提供している。2009年に育成した「タマアカネ」は橙肉色の原料用品種で、「コガネセンガン」を原料とする一般的な焼酎とは異なるフルーティーな香りや味わいを有し、焼酎需要の新規開拓に貢献している。一方で、塊根のでん粉歩留が低くアルコール収量が低いことや、萌芽性が悪く苗数が確保しにくいといった短所がある。そこで本研究では、でん粉歩留と萌芽性を改善した橙肉色の新しい品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「はなあかね」は、多収で焼酎醸造適性が優れる「九州171号」を母、多収の「九系311」を父とする交配集団から選抜した品種である。
  • 塊根の表皮の色は"橙"で肉の主な色は"橙"、濃淡は"淡"、二次色は"黄"である(図1、表1)。葉身の形は"三角形"で、裏面の葉脈のアントシアニン着色の大きさは"やや大"、蜜腺のアントシアニン着色は"強"である。
  • 「はなあかね」を原料とした焼酎は、フルーティーな香りや味わいといった、肉色が"橙"のサツマイモを原料とした焼酎の特徴を示すほか(表2)、「タマアカネ」を原料とした焼酎に比べ、華やかな香りを呈する香気成分であるリナロールをより多く含み(表3)、より華やかな香りとなる(表2)。
  • でん粉歩留が「タマアカネ」より8~10ポイント高く、でん粉重は「タマアカネ」比140~180%である(表1)。萌芽性は「タマアカネ」より優れ「コガネセンガン」並みの"中"である。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : カンショ生産者、焼酎メーカー、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積 : 南九州のカンショ産地、10ha。
  • その他 : 巻きつる性があるため、育苗時には伸ばしすぎないよう注意し、伸び過ぎてしまった場合には節間の詰まった中間苗を使う。サツマイモ基腐病に対する抵抗性は「シロユタカ」並みの"中"であるため、『サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策(令和4年度版)』(農研機構、2023年)を参照し、防除対策を徹底する。

具体的データ

表1 特性,表2 芋焼酎の官能検査結果,表3 芋焼酎の特徴香微量成分濃度,図1 塊根の形状

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2013~2023年度
  • 研究担当者 : 小林晃、甲斐由美、境垣内岳雄、末松恵祐、川田ゆかり、髙畑康浩、境哲文、藤田敏郎
  • 発表論文等 :
    • 小林ら「はなあかね」品種登録出願公表第37397号(2024年8月6日)
    • 山本ら(2021)宮崎県工業技術センター・宮崎県食品開発センター研究報告、65:45-50