J-クレジットの認証に向けた平炉の広葉樹皮炭の品質情報

要約

広葉樹皮炭の揮発分:固定炭素比は、J-クレジットの認証基準(0.6未満)を満たす確率が高いため、その認証の申請に適した品質指標である。調査した樹皮炭の同比が約0.4まで低下した要因の一つは、平炉の長い炭化時間(約2週間)である。

  • キーワード : J-クレジット、バイオ炭、樹皮炭、固定炭素、精煉度
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畜産研究領域・飼料生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、バイオ炭の農地施用による温室効果ガス削減量がJ-クレジットとして認証され、売買されている。木質系廃材の樹皮は平炉で時間をかけながら炭化され、一部は農地に施用されるが、その品質が認証の基準を満たすか不明である。J-クレジットの認証ではバイオ炭の品質指標として精煉度(電気抵抗値の対数値)又は揮発分:固定炭素比が利用されているため、島根県内の平炉由来の農地用広葉樹皮炭を例として、これらの指標を分析し、認証基準への適合を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 30年以上の製造歴を持つ島根県内の平炉(図1)において、出荷用の広葉樹皮炭のサンプル(炉内全層の混合物)を採取して分析したところ、精煉度が基準(9以下)に適合するサンプルの比率(以下、適合率と呼ぶ)は13%と低い(表1)。
  • 一方で、揮発分:固定炭素比の基準(0.6未満)への適合率は100%と高い(表2)。即ち広葉樹皮炭では、同比が精錬度よりも基準を満たす確率が高く、J-クレジット認証の申請に適する。
  • 平炉の深度別にサンプルを採取して2つの品質指標を分析したところ、それらの値は炭化時間の長い深層で顕著に低く、基準適合率は向上する(表1、2の第2、4層)。そのため出荷用の全層混合サンプルの揮発分:固定炭素比が基準の閾値(0.6)を下回り、平均0.41まで低下した要因の一つは、平炉の長い炭化時間(約2週間)である(表2)。
  • J-クレジット認証の申請に炭化温度データの提出は不要であるが、バイオ炭の定義には同温度350°C超が含まれるため、平炉の炉内温度を計測したところ、一部の炉で部分的に350°C超に達するものの、全ての炉で確実に達するとの確証は得られていない(図2)。

成果の活用面・留意点

  • J-クレジットの認証を目指した樹皮の炭化と農地施用の計画に活用できるとともに、認証申請時に提出する樹皮炭の品質指標を判断できる。
  • J-クレジット制度のバイオ炭の要件には品質以外も含まれ、且つ変更の可能性もあるため、同制度の最新の方法論を確認する必要がある。2024年12月現在、方法論AG-004(ver.2.1)「バイオ炭の農地施用」に揮発分:固定炭素比の基準は明記されていないが、日本バイオ炭普及会の基準である0.6未満が利用されている。
  • 樹皮炭の品質は、樹皮原料や排気設備等の製炭条件によって変動する。そのため、本成果情報は樹皮炭の品質がJ-クレジット制度の基準に適合することを保証するものでない。J-クレジット認証の申請には、申請対象の樹皮炭の品質分析が必要である。
  • 平炉内の樹皮炭の間には空隙が多く、外気が緩やかに流入する上に、温度計と樹皮炭との接触も目視はできない。そのため計測した炉内温度は、樹皮炭内部の炭化温度より低い可能性がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(国産特用林産物の国際競争力強化・生産性向上対策事業)
  • 研究期間 : 2023~2024年度
  • 研究担当者 : 小林創平、山口秀樹(宮崎みどり製薬(株))、藤原保之(宮崎みどり製薬(株))、船ケ山学(宮崎みどり製薬(株))、谷田貝光克(東京大名誉教授)
  • 発表論文等 : 小林ら(2025)日本炭化学会誌、3:3-9