要約
都府県の大豆作では、過去約30年間の作付規模の拡大により生産効率を表す全要素生産性(TFP)は14%向上し、単収は9%低下している。都府県のTFPと単収の変動要因として、肥料や水管理の低減、農業薬剤の増加があげられる。
- キーワード : 大豆、作付規模、単収、生産効率、全要素生産性
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域・飼料生産グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
大豆は転作や輪作にとって重要な作物であるが、政府統計の単収値(単位面積当たりの収量)は1980年代から低迷しており、その要因の解明は喫緊の課題である。大豆の総作付面積の約8割を占める都府県では、単収が低迷する一方で、経営体の大豆作付規模は拡大し(図1)、生産効率は向上したと考えられるが、この規模拡大に伴う単収、生産効率の変化を定量的に分析した事例はない。本研究は1987~2015年の大豆生産費統計から5~6規模階層×29年のパネルデータを作成し、回帰分析によりその変化と関連する要因の解明を試みる。
成果の内容・特徴
- 総合的な生産効率を示す全要素生産性(TFP、total factor productivity)を最新のFäre-Primont指数として推定すると、都府県と北海道の両方で経年的に上昇しており(図1)、年当たりの上昇率はそれぞれ2.4%と1.5%である。
- パネル回帰分析の結果(表1)によると、29年間の作付規模の拡大により都府県のTFPは計14%増加したと推定される。北海道でも9%の増加が推定され、規模拡大による全国的な生産効率の向上が確認できる。
- 都府県では、規模拡大に伴って単収は9%低下したと推定され(表1)、両者の関連性を確認できる。北海道で同様の低下は生じない。
- 肥料や農業薬剤等の各種生産要素を加えたパネル回帰分析から、都府県では肥料の削減によりTFPが向上し、単収が低下したことがうかがえる(表2)。また、水管理の低減と農業薬剤の増加がそれぞれTFPと単収の向上に寄与する。
- 都府県で4.の肥料の削減が生じる要因として、生産効率(TFP)への負の効果(表2の回帰係数)に加え、規模の大きな階層ほど労働と肥料が少ないことから(表3)、規模拡大に伴う労働力不足や省力・省資源化が考えられる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、研究者や行政官が大豆の単収や生産性の改良戦略を検討、策定するために利用できる。
- TFPは生産量を各種生産要素からなる全投入量で割った値で、総合的な生産性や生産効率を表す。本研究のTFPは、複数のサンプル間で比較可能なFäre-Primont指数であり、ノンパラメトリックな包絡分析法により推定される。同指数は、近年、世界的に利用されている。
- 統計上の各種生産要素の投入量(実質経費額)は、それを構成する資材や経費、又は栽培地域の変化など様々な要因により変動する。単収とTFPの改良戦略の策定のためには、各生産要素の変動要因の解明やその因子も含めた回帰分析も必要である。
- 本成果は1987~2015年の大豆生産費統計から得られた国又は地域レベルの分析結果であり、他の年代、統計および個別事例には適合しない可能性がある。また、気温等の環境条件や播種日等の耕作条件の変化は考慮していないことに注意が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2019~2024年度
- 研究担当者 : 小林創平、國光洋二
- 発表論文等 :
- 小林・國光(2021)農業経済研究、93:214-219
- Kobayashi and Kunimitsu(2024)Heliyon, 10:e38396