いもち病抵抗性で年内草の収穫に適したイタリアンライグラス品種「フユワセ」

要約

イタリアンライグラス「フユワセ」は、いもち病抵抗性が強いために暖地で9月に播種が可能で、既存のいもち病抵抗性品種「Kyushu1」より年内草(12月から1月に収穫)の出穂程度が高く、年内草の乾物収量は「Kyushu1」より高い。

  • キーワード : イタリアンライグラス、品種、いもち病抵抗性、年内草、出穂程度
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畜産研究領域・飼料生産グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

暖地において、イタリアンライグラスを9月頃に播種して年内草を12月から1月に収穫する作型は、播種や収穫などの作業分散、また、通常播種期の収穫期である春季の天候不順等に対してリスク分散になるなどの有用性がある。9月に播種するためにはいもち病抵抗性が必要であるが、既存のいもち病抵抗性極早生品種「Kyushu1」は、年内草での出穂程度は高くない場合が多く、収量を高めたり、ロールベールとして巻く際の収穫効率を高める観点から、出穂程度が高く、出穂茎が伸びるために草丈が高くなる品種が求められている。そこで、いもち病抵抗性を持ち、年内草で出穂程度の高い品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「フユワセ」を暖地で9月に播種した場合の年内草における出穂始めは「Kyushu1」より15日以上早く、年内草の出穂程度は「Kyushu1」より高い(図1、2、表2)。
  • 九州地域における9月播種での乾物収量は、年内草は「Kyushu1」比110と多収、春1番草(年内草収穫後の再生草)は「Kyushu1」比88と低収、年内草と春1番草の合計では、「Kyushu1」比98と同程度である(図1)。
  • 幼苗接種検定によるいもち病の発病程度は、抵抗性品種「Kyushu1」並で、罹病性品種「ワセユタカ」より発病程度は低く、「フユワセ」のいもち病抵抗性は高い(表1)。
  • 乾物率は年内草、春1番草とも、「Kyushu1」と同程度である(表2)。
  • 年内草の草丈は「Kyushu1」より高く、春1番草の草丈は「Kyushu1」よりやや低い(表2)。
  • 可消化養分総量(TDN)は、年内草、春1番草とも「Kyushu1」と大きな差はない(表2)。粗蛋白質含量(CP)は、年内草は「Kyushu1」よりやや低く、春1番草では「Kyushu1」と同程度である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 九州南部を中心に、年内草を収穫する体系に用いられる。これまでに利用が少なかった早期水稲後での作付けも期待される。種子の市販開始は2029年以降を予定。
  • 9月播種では夏雑草の繁茂を抑えるために、播種時期は9月中旬以降とし、特に夏雑草との競合が予想される場合には除草剤(播種前はグリホサート、生育中はチフェンスルフロンメチル)の散布(チフェンスルフロンメチルは収穫の3週間前)などの対策を行う。
  • 水田で作付けする場合、湿害を回避するため、明渠、弾丸暗渠などの排水対策を行うとともに、台風等で大雨が予想される場合には播種を見合わせる。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2011~2023年度
  • 研究担当者 : 荒川明、桂真昭、波多野哲也、山下浩、我有満、高井智之、上床修弘、松岡誠、木村貴志
  • 発表論文等 :
    • 荒川ら「フユワセ」品種登録出願公表第37396号(2024年8月6日)
    • 荒川ら(2024)日草誌、70別:62