要約
かんしょ苗とサツマイモ基腐病菌の胞子懸濁液を用い実験室と温室で行う検定法で、基腐病菌の接種から3週間で抵抗性を評価できる。通年で検定可能なため、サツマイモ基腐病に対し茎の抵抗性が強いかんしょ品種の育種や探索、抵抗性遺伝子座の解析の加速化が可能である。
- キーワード : サツマイモ基腐病、抵抗性、苗、茎、室内検定
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
2018年に日本で初めて確認されたサツマイモ基腐病(以下、基腐病)の克服のため、抵抗性品種の育種や探索、抵抗性遺伝子座の解析が進められている。抵抗性は、基腐病発生圃場に植え付けたかんしょの茎や塊根の病徴を観察して総合的に判断される(圃場検定)。この検定は生産者の圃場に近い環境で抵抗性を評価できる優れた方法だが、評価結果が得られるまで数ヶ月の期間と多くの労力が必要である。また、一年に一度しか検定が行えず、抵抗性評価値が圃場の基腐病菌の密度の不均一さや気象状況の違いに影響を受けるため、安定した結論を得るためには複数年の調査が必要となる。そこで本研究では、これらの問題の解決のため室内で実施可能な検定方法を開発する。
成果の内容・特徴
- 温室や苗床で栽培した健康な株から採取し上位の展開葉を3枚残すように調製した15~25cm程度の長さの先端苗または中間苗の下部約3cmを、濃度104個/mlの基腐病菌の胞子懸濁液に室温で1時間浸漬して接種する。その後ポリポットに移植し、日中12時間27°C、夜間12時間23°Cに設定した温室で21日間栽培する。抵抗性評価は、株を掘り出して土を洗い落とし、基腐病により腐敗した長さ(腐敗長)を測定することで行う。腐敗長が短いほど抵抗性が強く、長いほど抵抗性が弱い(図1)。
- 代表的な22品種について抵抗性を評価すると、腐敗長は抵抗性が最も強い「ベニハヤト」の3.7cmから、最も弱い「コガネセンガン」と「コナホマレ」の7.0cmの間の値を示す(表1)。室内検定の腐敗長と圃場検定の評価値の間には統計的に有意な相関が認められるため、圃場検定の評価値を一定の精度で(R2 = 0.61)推定可能である(表1)。
- 圃場検定と比較した場合、室内検定により、短期間かつ少ない労力で、菌密度の不均一さや気象変化の影響が少ない抵抗性評価を通年で行うことが可能である。
成果の活用面・留意点
- 本研究では接種源として基腐病菌F3株を用いた。
- 本法はかんしょ苗を用いて茎の抵抗性を評価するものであり、塊根の抵抗性評価は行えない。
- 1品種1反復の検定につき3~4本の苗に接種する。まれに基腐病以外の原因で枯れる苗があるため(病徴色で判別可能)、2~4本の茎の腐敗長の平均をその反復の代表値とする。基腐病抵抗性の目安として、腐敗長5.0cmまでを抵抗性強、5.0cm~6.5cmを中、6.5cm~を弱としている。
- 秋に収穫した塊根から萌芽した苗を使用し、本法を用いて冬の期間に予備選抜を行い、抵抗性が強いと判断された系統を春に圃場に植え付けることで、抵抗性品種育種の加速化に利用できる。
- 本法により抵抗性評価を通年で行えるため、遺伝資源からの抵抗性品種の探索や抵抗性遺伝子座の解析の加速化が可能である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業、国際競争力強化技術開発プロジェクト)
- 研究期間 : 2019~2024年度
- 研究担当者 : 田淵宏朗、小林晃、川田ゆかり、岡田吉弘、小林有紀
- 発表論文等 : Tabuchi H. et al. (2024) Breed. Sci. 74:214-222