要約
曲げ苗栽培方法は、つるが180°以上曲がった状態に固定した苗を、半自動型野菜移植機で移植する栽培方法で、収量は慣行と同等以上である。移植作業に適した苗の作り方を明らかにし、曲げ苗を簡易に製作するために、曲げた状態の苗を通すと自動で紙テープを巻き付ける器具を開発した。
- キーワード : かんしょ、野菜移植機、曲げ苗、紙テープ
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・施設野菜グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
かんしょ苗の移植は、他の作物とは異なり、切り取ったつるをうねに挿込むことで行われる。このために、専用の移植機が必要であるが、他の作物には使えず生産コストの増加の要因となっている。そこで、本研究では、半自動型野菜移植機で移植作業を可能にする曲げ苗栽培方法を開発した。
成果の内容・特徴
- 曲げ苗は、つるを180°以上曲げた形にした苗であり、半自動型野菜移植機で野菜のセル苗と同様に移植する。全長が200~300mmmで曲げた側の下部のふくらみが40mm程度の苗が移植機に詰まりにくいために移植精度が高く、移植作業に適する(図1)。
- 曲げ苗の製作作業は、つるが折れるのを防止するために、5時間以上(葉が萎れる程度)取り置きする(図2)。活着率は、取り置き期間が1日間と7日間が14日間よりも高く、半自動移植機による移植精度は、7日間と14日間が1日間よりも高い。したがって、苗の刈り取りから移植までの作業は、苗の製作作業を刈り取り後5時間から7日間の間で行い、移植作業を7日間前後で行う。
- 「べにはるか」の株あたり収量、塊根数は、曲げ苗と慣行苗に差は認められない(図3)。「すずほっくり」では、塊根数が曲げ苗で多くなる傾向がある。曲げ苗は、切り口側も地上部にあり、「すずほっくり」では切り口側からつるが伸びている株が多いためと考えられる。
- 曲げ苗を効率的に製作するための器具を開発した(図4)。曲げた状態の苗を両手で保持し、上から下に向かって開発した器具に通すと自動で紙テープが巻き付き切断され、手を離すとコンテナに収納される。曲げた側の底から60mm程度の位置で留めることで、移植作業に適した曲げ苗の製作ができる。この器具を用いた場合の生産効率は、慣れた人で500~700本/時間程度である。
- 苗の製作から移植までの作業時間は、面積あたり3500本/10aとした場合、曲げ苗栽培方法は7時間/10a(苗製作が5時間、移植作業が2時間)で、苗製作時間が長いために専用のかんしょ挿苗機を用いた場合より1時間長いが、手植えの場合より10時間短い。
成果の活用面・留意点
- かんしょと露地野菜を栽培している生産者は、半自動型野菜移植機を汎用利用することが可能になる。
- 使用した半自動型移植機は(株)井関農機社製のPVH1で、「ホッパー」部に大苗用、「ナエガイド」部にナエガイドW、「苗供給カップ」部に大苗延長スリープが使われている。
- 葉が苗供給カップ部からはみ出す場合は、大苗延長スリープを2つ使用し、葉が苗供給カップに収まるようにする。
- 紙テープはバックシーラー用で、収穫時には粘着剤が若干残っている程度でほとんどが消える。
- 収量が同等であることを確認した品種は、「べにはるか」「すずほっくり」「高系14号」「安納いも」である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:青果用かんしょの省力機械移植栽培体系の確立)
- 研究期間 : 2017~2022年度
- 研究担当者 : 松尾健太郎、落合将暉、小林透、石井孝典
- 発表論文等 :
- 松尾ら「つる植物の栽培方法、つる植物の曲げ苗の作成方法及びつる植物の結束装置」特許第7231930号(2023年2月21日)
- 松尾ら(2024)農作業研究、59:157-162