多収で土壌病害虫に対する複合抵抗性をもつ原料用かんしょ新品種「コガネタイガン」

要約

かんしょ「コガネタイガン」はサツマイモ基腐病やサツマイモつる割病、線虫に強く、収量性は「みちしずく」並みに優れる、焼酎およびでん粉原料用の品種である。焼酎にした時の香味は「コガネセンガン」の焼酎に類似している。苗の萌芽性が優れるため早植えの作型にも対応しやすい。

  • キーワード : かんしょ、多収、焼酎、でん粉、サツマイモ基腐病
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

2021年に焼酎原料用の主力品種「コガネセンガン」に代わる品種として、サツマイモ基腐病に抵抗性をもつ焼酎・でん粉原料用の「みちしずく」を育成した。しかし、近年の気候変動や他の病害虫の発生などに備えるためには、複数の品種を栽培して被害リスクを分散させることが重要である。
そこで、本研究では、「みちしずく」並みにサツマイモ基腐病に強く、多収で、焼酎醸造時の香味が「コガネセンガン」の焼酎に類似しているかんしょ新品種の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 「コガネタイガン」は、でん粉歩留が高く萌芽性に優れる「九系330」を母、多収で線虫抵抗性が強い「九系11084-2」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
  • いもは"楕円形"で、表皮はやや粗く、皮色の主な色は"黄白"、肉色は"淡黄白"、目は浅く、条溝は"微"、皮脈は"無"、裂開は"微"である。萌芽性は"良"、しょ梗の強さは"中"、貯蔵性は"易"である(図1、表1)。
  • 上いも収量は標準栽培、長期栽培ともに「みちしずく」並みに高く、「コガネセンガン」よりも優れる(表2)。上いも一個重は「みちしずく」や「コガネセンガン」よりも大きい。でん粉歩留は「みちしずく」と「コガネセンガン」の中間で、でん粉収量は「コガネセンガン」よりも優れ、「みちしずく」並みに高い。でん粉の白度は「みちしずく」よりは低いが、「コガネセンガン」より高く、食品加工用途の品質基準を満たす。
  • サツマイモ基腐病抵抗性は「みちしずく」と同等の"やや強"、サツマイモつる割病抵抗性は「みちしずく」よりも強い"強"、サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は"強"、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は"やや強"である(表1)。
  • 「コガネタイガン」を焼酎原料とした時のアルコール収得量および官能評価点は「みちしずく」よりは低いものの、「コガネセンガン」より高い(図2)。焼酎の香味は「みちしずく」同様、「コガネセンガン」の焼酎に類似しているが、焼酎に含まれる特徴香気成分の構成比率は「コガネタイガン」の方が「みちしずく」よりも「コガネセンガン」に近い。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : かんしょ生産者、焼酎メーカー、でん粉製造事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : おもに南九州かんしょ作地域の2,000ha。焼酎・でん粉原料用かんしょの奨励品種として鹿児島県が採用(2025年)。
  • その他 : サツマイモ基腐病抵抗性は"やや強"であるが、『サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策(令和4年度版)』(農研機構、2023年)などを参照し、防除対策を徹底する。

具体的データ

図1 「コガネタイガン」の塊根,表1 いもの形態、生態的特性および病害虫抵抗性,表2 育成地(宮崎県都城市)における主な栽培・品質特性,図2 25度焼酎中の特徴香気成分構成比(GC-MS比)と焼酎醸造適性の評価(霧島酒造株式会社)

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(食料安全保障強化に向けた革新的新品種開発プロジェクト)
  • 研究期間 : 2016~2024年度
  • 研究担当者 : 小林晃、川田ゆかり、境垣内岳雄、末松恵祐、甲斐由美、境哲文、高畑康浩
  • 発表論文等 : 小林ら「コガネタイガン」品種登録出願公表第37838号(2025年5月14日)