要約
「さくらほのか」は「アヤムラ サキ」に代表される紫カンショとは異なる赤紫の肉色を特徴とする。上いも重は「アヤムラ サキ」や「ムラサキマサリ」よりも多く、サツマイモ基腐病やセンチュウへの抵抗性にも優れる。赤紫の色調を活かし、菓子などの加工用に適する。
- キーワード : カンショ、赤紫肉色、ペラルゴニジン、多収、サツマイモ基腐病抵抗性
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・カンショ・サトウキビ育種グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
紫カンショは、一般的な黄色のカンショとは異なる紫色の色調を活かして、ペーストやパウダーなどの加工原料のほか、揚げ菓子などにも利用されている。南九州の紫カンショ主力品種は「アヤムラ サキ」や「ムラサキマサリ」であるが、サツマイモ基腐病に対する抵抗性はともに"中"程度であることから、サツマイモ基腐病に強い紫カンショ品種が求められている。加えて、「アヤムラ サキ」や「ムラサキマサリ」の育成から20年以上が経過し、従来品と差別化でき新たな商品開発に繋がる紫カンショ品種の育成にも期待が寄せられている。そこで、本研究では新たな肉色である赤紫色を呈し、多収でサツマイモ基腐病抵抗性にも優れるカンショ新品種の育成を行う。
成果の内容・特徴
- 「さくらほのか」は、サツマイモ基腐病抵抗性を持つ橙肉色の「九系341」を母、赤紫肉色の「オリジンルビー」を父とする交配集団から選抜した品種である。
- 塊根の肉の主な色は"赤紫"、表皮の色は"紫赤"である(図1、表1)。塊根の形は"楕円形"、苗床での萌芽性は"中"である。
- サツマイモ基腐病抵抗性は"やや強"で「アヤムラ サキ」よりも優れる(表1)。サツマイモネコブセンチュウやサツマイモネグサレセンチュウへの抵抗性にも優れる。
- 育成地における上いも重は標準栽培で「アヤムラ サキ」や「ムラサキマサリ」よりも大きい(「アヤムラ サキ」比123%)(表1)。切干歩合は「アヤムラ サキ」や「ムラサキマサリ」よりも低い。
- 塊根のアントシアニン組成はペオニジンが主成分の「アヤムラ サキ」、「ムラサキマサリ」と大きく異なり、赤紫色を呈するペラルゴニジンが主な成分である(表1)。
- 蒸しいもの肉色は紫カンショ品種と差別化が図れる"赤紫"で、肉質は"やや粘質"である(表2)。蒸しいものブリックス(甘さの指標)は「アヤムラ サキ」や「ムラサキマサリ」より高いが、繊維は"やや多"である。
- 用途は揚げ菓子やダイスカット菓子の素材に適する(図2)。裏ごしすることでペーストの原料としても活用できる。
普及のための参考情報
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(食料安全保障強化に向けた革新的新品種開発プロジェクト)
- 研究期間 : 2017~2024年度
- 研究担当者 : 境垣内岳雄、小林晃、末松恵祐、川田ゆかり、甲斐由美、倉田理恵
- 発表論文等 :
- 小林ら「さくらほのか」品種登録出願公表第37939号(2025年7月8日)
- Sakaigaichi et al. (2026) Breed. Sci. 76:190-195.