世界初の難脱粒性・難穂発芽性を併せ持つ関東以南向けソバ新品種「はるかみどり」

要約

ソバ新品種「はるかみどり」は多収で、難脱粒性、難穂発芽性を併せ持つことから安定生産への貢献が期待できる。生態型は中間秋型で関東以南での栽培に適しており、夏まき栽培に加え春まき栽培も可能である。実需評価において、ソバ手打ち麺の食味は標準品種と比較し同等以上である。

  • キーワード : ソバ、新品種、難脱粒性、難穂発芽性、2期作
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地水田輪作研究領域・作物育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

ソバの安定生産は、国産ソバ実需からの品種育成に対するニーズの中で重要な項目である。ソバは脱粒しやすい作物であり、刈遅れ等による収量低下が問題である。収穫時期が梅雨と重なりやすい春まき栽培では穂発芽による収量・品質低下が問題である。また2期作(春まき・夏まき)を行う産地では、それぞれに適した品種を用いることが多いため異品種の混入が起きやすい。
そこで、脱粒による収量損失が少なく、穂発芽しにくく、2期作が可能なソバ新品種を育成することで、安定生産に貢献する。

成果の内容・特徴

  • ソバ系統「W/SK86GF」由来の難脱粒性を有する難穂発芽性で晩生の「16春交6-08GF固定」を種子親、難穂発芽性の中生系統「九系28」を花粉親とする人工交配から育成された品種である。
  • 生態型は中間秋型であり、成熟期は「常陸秋そば」より早く(春:7日以上、夏:6日)、「NARO-FE-1」より遅い(春:4-6日、夏:7-10日)(表1)。容積重は「常陸秋そば」(春:592g/L、夏:637g/L)、「NARO-FE-1」(春:579g/L、夏:633g/L)と同等以上に重い(春:597g/L、夏:651g/L)。収量比は、現地試験では「常陸秋そば」、「NARO-FE-1」より多収で(春:110%、夏:151%)、育成地では同等か多収なことから(春:97%、夏:108%)、2期作が可能である。
  • 主要品種と比較し、子実のひっぱり強度が2倍程度強く、自然脱粒重割合が少ない(表1)、収穫が2週間程度遅れた場合のコンバイン収穫量の減少率は、「常陸秋そば」、「NARO-FE-1」を標準品種とした場合に40.1%から21.8%へ、18.3ポイント軽減する(図1)。
  • 難穂発芽性が強いため、収穫時期が梅雨と重なる春まき栽培で問題となる穂発芽の発生を抑制できる(図2)。
  • ソバ麺の食味、色は、実需者の評価において標準品種と比較して同等以上である(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : ソバ生産者、ソバ加工事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 関東以南で2028年度に200haの栽培を見込む。
  • その他 : 春まき栽培で収穫した種子を、直後の夏まき栽培に使用すると発芽率が低くなることがあるため、使用は避ける。脱粒しにくい品種ではあるが、極端に刈遅れた場合は脱粒による収量低下リスクが高まるため、適期での収穫につとめる。穂発芽しにくい品種ではあるが、春まき栽培で極端に刈遅れた場合は穂発芽のリスクが増すため、適期での収穫につとめる。花が淡い緑色の品種である。

具体的データ

図1 「はるかみどり」のコンバイン収穫試験結果(意図的な刈遅れ試験),図2 「はるかみどり」の難穂発芽性,表1 育成地および現地における「はるかみどり」の生育・収量特性(育成地・熊本県合志市、現地・栃木県小山市,表2 実需者における食味評価結果

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 1999~2024年度
  • 研究担当者 : 鈴木達郎、原貴洋、森下敏和、石黒浩二、大塚しおり、原尚資、勝田瑞皐
  • 発表論文等 : 鈴木ら「はるかみどり」品種登録出願公表第37873号(2025年6月5日)