多収で加工適性に優れる暖地向け大豆新品種「きらゆたか」

要約

大豆新品種「きらゆたか」は、多収で難裂莢性、葉焼病抵抗性を持ち、粗タンパク質含有率が高く豆腐加工適性に優れる。栽培特性、子実特性は「フクユタカ」に類似しており、「フクユタカ」から置換えやすく、九州を中心とした暖地から温暖地で普及が期待される。

  • キーワード : 大豆、多収、難裂莢性、葉焼病抵抗性、豆腐
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地水田輪作研究領域・作物育種グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

大豆の自給率は食品用に限っても2割程度であり、需要の多くを輸入に依存しているため、食料安全保障の観点から、自給率の向上は喫緊の課題である。日本の大豆単収は約160kg/10aと低く、多収品種の育成や栽培技術の改善等による単収の向上、国産大豆の増産が望まれている。九州から東海地域を中心に作付けされている「フクユタカ」は、粗タンパク質含有率が高く、主に豆腐向けに利用されており、作付面積が国内最大の品種であるが、温暖化に伴って被害の拡大が懸念される葉焼病に感受性であることや、成熟後に莢がはじけて種子がこぼれ落ちてしまい、収量ロスが生じやすいこと等が影響し、単収が低下傾向にある。そこで、これらの問題に対応する新品種として、難裂莢性、葉焼病抵抗性を有し、粗タンパク質含有率が高い新品種「きらゆたか」を育成した。

成果の内容・特徴

  • 「フクユタカ」を種子親、葉焼病抵抗性、難裂莢性を持つ「九系313」を花粉親とする交配組合せから育成した系統に、「フクユタカ」を種子親として再度交配し、育成した品種である。
  • 九州地域の成熟期は"中"で「フクユタカ」と同熟期かやや遅く、九州から東海にかけて普及が拡大している「そらみのり」より1週間程度早い(表1)。倒伏および青立の発生程度は、「フクユタカ」よりもやや多い(表1)。茎の長さは「フクユタカ」より短い(表1、図1)。百粒重は「フクユタカ」と同等かやや重く(表1)、へその色は「フクユタカ」と同じ"淡褐"で、子実の外観が類似している(図1)。
  • 育成地(農研機構九州沖縄農業研究センター 熊本県合志市 普通畑)における4カ年の坪刈り試験では「フクユタカ」よりも約1割多収で、「そらみのり」より約1割低収である(表1)。また、佐賀県農業試験研究センター(水田転換畑)での4カ年の坪刈り試験では、「フクユタカ」よりも約3割多収である(表1)。
  • 佐賀県の生産者ほ場における標準播の現地実証試験では、単年度4カ所における標播のコンバイン収穫試験の平均で、「フクユタカ」よりも1割多収で「そらみのり」よりもやや低収である(表2)。2年間の早播のコンバイン収穫試験では「フクユタカ」よりも約5割多収である。
  • 「フクユタカ」は葉焼病に"感受性"であるのに対し、「きらゆたか」は"抵抗性"であり、ダイズモザイクウイルス抵抗性については、「フクユタカ」も「きらゆたか」も、A、B系統に抵抗性であるが、A2、C、D、E系統には感受性である(表1)。裂莢の難易については、「フクユタカ」が"易"であるのに対し、「きらゆたか」は"難"である(表1)。
  • 粗タンパク質含有率は「フクユタカ」より高く"高"に分類され、豆腐加工適性試験の結果は、豆乳抽出率は「フクユタカ」と同等、豆腐の破断強度はやや高い(表1、3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 大豆生産者、豆腐および納豆等の加工事業者、普及指導機関。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 九州~東海地域を中心とする西日本地域で令和9年に1,000ha程度の普及を見込む。
  • その他 : 病害虫の蔓延を防ぐため、過度な連作を避け、適切な輪作を行うとともに、明渠および暗渠等の排水対策、農薬の種子塗抹処理を確実に実施する。また、やや倒伏に弱いため、過度な早播や密植は避ける。

具体的データ

表1 「きらゆたか」の育成地および佐賀県農業試験研究センターにおける試験成績,図1 「きらゆたか」の草本と子実,表2 佐賀県内の生産者ほ場(転換畑)における現地実証試験成績,表3 「きらゆたか」を原料とした豆腐の加工適性試験結果

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(農林水産研究推進事業 : センシング技術を駆使した畑作物品種の早期普及と効率的生産システムの確立)
  • 研究期間 : 2006~2024年度
  • 研究担当者 : 大木信彦、高橋将一、高橋幹、河野雄飛、中澤芳則、小松邦彦、島村聡
  • 発表論文等 : 大木ら「きらゆたか」品種登録出願公表第37916号(2025年8月14日)