サツマイモ基腐病の被害甚大地区における効果的な防除対策の組み合わせと被害の推移

要約

サツマイモ基腐病の被害甚大地区における3ヶ年(2021~2023年)の現地調査の結果から、「土壌中の残渣リスクの低減」、「抵抗性品種の導入」、「排水対策」の三つの防除対策を組み合わせて実施した圃場では被害が低減する。

  • キーワード : サツマイモ基腐病、抵抗性品種、残渣処理、排水対策、IPM
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・畑作物・野菜栽培グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

サツマイモ基腐病(以下、基腐病)がまん延している南九州のかんしょ産地では、基腐病の防除対策を複数の技術を組み合わせて実施する必要がある。しかし、どのような防除対策技術が実際の発生圃場では効果的であるかについては未解明である。そこで、本研究は基腐病の被害甚大な地区(被害株率30%以上の圃場が地区の半数程度)において有効な対策を提示するために、防除対策と被害状況を3ヶ年間にわたり調査し、生産者により行われた防除対策と被害程度の推移との関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 圃場での被害軽減に有効な対策技術の解明のためのデータ収集・整理の条件として、圃場における基腐病の防除対策を9項目に類型化する(図1)。これらの項目について、生産者に聞き取り調査を行うとともに、排水対策に関しては、聞き取り調査に加えて現地調査を行った。また、基腐病の被害度に関する調査を収穫の約1週間前に行い、基部が黒変した株数をカウントし、被害株率10%以上を"被害度高"、10%未満を"被害度低"とした。
  • 各防除対策と被害度のクロス集計を基に、カイ二乗検定を行った結果、9項目の対策のうち「土壌残渣リスク低減」は5%水準(P値 : 0.024)で、「排水対策」は1%水準(P値 : 2.094e-7)で、「抵抗性品種の導入」に関しては10%水準(P値 : 0.061)で統計的な有意差が認められ、有効な対策であることが分かる。
  • 上記の三つの対策と被害度の関係を帯グラフで表すと、"被害度低"では対策を実施した圃場の比率が高くなっており効果が認められる。しかし、三つの対策いずれにおいても、対策を実施しても"被害度高"となる圃場があることから(図2)、被害甚大な地区においては、いずれか一つの対策だけでは"被害度低"とするには不十分であることが分かる(図2)。
  • 防除対策の組み合わせを評価するために、統計的に有意差が認められた三つの対策を要素として表現するネットワーク図を作成する(図3)。ネットワーク図を用いると、どの経路(防除対策の程度)をたどると被害を低減できていたかが可視化され、三つの防除対策を全て導入した圃場ではいずれも"被害度低"と連結される。つまり、本地区においては「土壌残渣リスクの低減」、「排水対策」、「抵抗性品種の導入」の三つの対策を組み合わせて実施することが、基腐病の低減に有効であることが分かる。
  • 対象地区における2021~2023年の被害度を調査した結果、三つの対策が着実に実施された当該地区では、この間の基腐病の被害が低減している(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本調査の全ての対象圃場では、苗床での健全苗の選別、ベノミル(またはベノミル-チウラム)水和剤による苗消毒が実施され、図1の「6.健全苗の育成」を前提としたものである。
  • 本研究の結果は基腐病の被害甚大地区において、被害株率を10%未満にするために有効な対策の組み合わせを示したものである。被害が低下した地区での対策については検討が必要である。

具体的データ

図1 サツマイモ基腐病防除対策の整理,図2 防除対策と被害度の帯グラフ,図3 ネットワーク図によるサツマイモ基腐病被害度と防除対策の組み合わせの可視化,図4 対象地区におけるサツマイモ基腐病被害の推移

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(イノベーション創出強化研究推進事業、戦略的スマート農業技術等の開発・改良)
  • 研究期間 : 2021~2024年度
  • 研究担当者 : 島武男、落合将暉、小林有紀、石井孝典、小林透、鎌田えりか、斎藤晶、関口博之、吉田重信
  • 発表論文等 :