要約
熱赤外カメラで撮影した葉温の比較によりサツマイモ基腐病の発生初期を検出する手法と、ドローンで撮影した本圃の可視画像を機械学習分類することにより本病の発生を推定する手法である。これらの手法により圃場での本病の発生を省力的に把握し、早期の防除対策の策定が可能となる。
- キーワード : サツマイモ基腐病、熱赤外カメラ、ドローン、機械学習
- 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・畑作物・野菜栽培グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
サツマイモ基腐病(以下、基腐病)の発病株を早期に発見し抜き取ることは、基腐病のまん延を抑制するために有効な対策のひとつである。また、本圃における基腐病の発生の推定は、薬剤散布や早期収穫などの防除対策の実施を判断するための有力な情報となる。しかし、基腐病は、発生初期には葉に明瞭な病徴を示さず、また、生育が旺盛な時期では、発病株を検出するためには茎葉をかき分けて株基部の病徴を確認する必要があり、労力負担が大きい。
基腐病に罹病した植物体では、初期には株基部の腐敗により水輸送・蒸散が阻害され、葉温が上昇すると推察される。さらに病勢が進行すると、圃場レベルでは、葉の変色・枯死に伴い、最終的には茎葉が消失して土壌やマルチが露出するなど、圃場被覆状況に顕著な変化が生じる。そこで本研究では、基腐病の発生状況を省力的に推定するために、本病の発病に伴う葉温の上昇を観測する手法と、圃場被覆状況の変化を観測する手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 基腐病抵抗性"やや弱"の品種「コガネセンガン」において、基腐病発病株では葉温が上昇する(図1)。なお、基腐病抵抗性"やや強"の品種「べにまさり」と「こないしん」では、発病しても葉温の上昇は生じない(データ省略)。
- 発病株は黒変長が伸長すると健全株よりも葉温が高くなる。熱赤外画像を用いた葉温の比較により、外気温30°C以上の高温環境において、葉温が1.4°C以上上昇している株は発病株として判定できる(図2)。
- ドローンで撮影したサツマイモ栽培圃場の可視画像に対して、機械学習分類モデルを適用することで、圃場内の健全葉、黄化葉、枯死葉、マルチ、土壌を分類・可視化し、それぞれの面積割合を算出することができる(図3)。
- 雑草による被覆は分類の誤差要因となるため、雑草による被覆が1割未満の圃場であれば、分類された黄化葉と枯死葉の合計割合から基腐病の発病株率を推定できる(図4)。
成果の活用面・留意点
- 手持ち型の熱赤外カメラやドローン搭載の可視カメラで撮影した画像をもとに、基腐病の発病初期株の検出、および、病勢が進行した圃場の発病株率の推定を省力的に実施できる。防除対策の策定を支援するための情報としての活用が期待される。
- 熱赤外カメラは、茎葉が繁茂し重なり合う条件や、風などにより葉温が変化しやすい条件では、発病株の葉温の上昇を検出することは難しい。このため、画像データは、生育初期および無風・弱風の外気温30°C以上の日に取得することが望ましい。
- ドローンによる空撮は、雑草による被覆が少ない圃場での使用が適する。なお、本研究で使用したドローンはPhantom4 Pro(DJI社)である。異なる条件で撮影した場合は分類モデルの調整が必要となる場合がある。
- 熱赤外画像から検出された葉温の上昇や、可視画像から分類された黄化葉・枯死葉が、他の病害や生育不良、品種特性に由来する場合、基腐病との誤判定が生じる可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(国際競争力強化技術開発プロジェクト : 革新的スマート農業技術開発、戦略的スマート農業技術等の開発・改良)
- 研究期間 : 2021~2023年度
- 研究担当者 : 落合将暉、石井孝典、島武男、齊藤晶
- 発表論文等 :
- 落合ら(2025)農作業研究、60:37-45
- 落合ら(2024)農作業研究、59:25-31