加工・業務用ホウレンソウの収量予測モデルの補正方法と処理プログラム

要約

ドローンによる空撮画像を用いてホウレンソウの葉面積指数(LAI)を推定し、収量予測モデル内部のLAI推定モデル式にデータ同化することで、収量予測モデルを補正するプログラムである。これにより生育のばらつきがモデルに反映されて収量予測の精度が向上する。

  • キーワード : 加工・業務用ホウレンソウ、ドローン、LAI、データ同化、収量予測
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地畑作物野菜研究領域・畑作物・野菜栽培グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

加工・業務用ホウレンソウの生産では、加工工場への定時定量出荷が求められる。これを実現するために、収量予測モデルは収量の事前把握と収穫計画の策定に有効である。しかし、既存の収量予測モデルは主に気象データに基づいて収量を予測するが、実際の生産現場では多様な環境要因によってホウレンソウの生育にばらつきが生じることが多く、これが予測精度の低下を招いている。本研究では、ドローン空撮画像を用いてホウレンソウの生育のばらつきをモデルに反映することで、収量予測精度の向上に資する手法を構築する。

成果の内容・特徴

  • ドローンに搭載されたマルチスペクトルカメラでホウレンソウ栽培圃場を撮影し、植生指数(Red Edge Soil Adjusted Vegetation Index : RESAVI)を用いてLAIを算出できる(図1)。
  • ドローン空撮画像を用いて、圃場ごとのLAIのばらつきを把握することができる(図2)。
  • ドローン空撮画像から算出したLAI推定値を、収量予測モデル内部のLAI推定式にデータ同化することで、特に生育不良が著しい圃場において乾物収量の予測精度が向上する(図3)。
  • 収量予測プログラムに、ホウレンソウの作付け情報とLAI値を入力することで、補正された収量予測値が計算される。計算結果として、収穫予定日の単収・収量、目標単収への到達日、到達単収・収量が得られる。これらは、収量予測結果(CSVファイル)、週ごとの収量を集計したグラフ(PNGファイル)、圃場一筆ごとの収量マップ(PNGファイル)として出力される(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本手法を用いることで、ホウレンソウの収穫前に圃場ごとの単収および収量を計算し、可視化することができる。特に、出芽不良や初期生育不良が発生した場合に収量予測の精度が向上し、収穫計画の策定に有用な情報を提供できる。
  • 本研究で使用したドローンはPhantom4 Multispectral(DJI社)であり、撮影高度は50mである。異なる機種や撮影高度ではLAI算出方法の調整が必要となる場合がある。
  • ドローンを用いたLAIの推定は、生育後期(目安 : LAIが4以上)に精度が低下するため、収穫の約1ヶ月前までの空撮が適する。また、雑草が多い圃場では精度が低下するため、雑草が少ない圃場での利用が適する。
  • 収量予測プログラムは、利用許諾の上で使用できる。営利以外の目的で利用する場合に限り、農研機構ホームページから利用申請することでEXEファイルやGoogle Colabで無償利用できる。いずれの利用においてもインターネット環境およびメッシュ農業気象データの利用申請が必要となる。
  • 収量予測プログラムは、LAI値がない場合には補正を行わず、従来の収量予測モデルに基づいてホウレンソウの収量を計算する。
  • 補正に使用するLAI値は、ドローン画像のほか、衛星画像、実測、携帯型センサ等によって取得できる。ただし、LAI値の精度は収量予測精度に影響するため、留意する必要がある。

具体的データ

図1 地上調査によるLAI測定値とドローン空撮画像によるLAI推定値の比較,図2 ドローン空撮画像を用いた圃場ごとのLAIのばらつきの可視化,図3 従来手法と補正手法による乾物収量の予測精度の比較,図4 加工・業務用ホウレンソウの収量予測プログラムの概要

その他

  • 予算区分 : 交付金
  • 研究期間 : 2022~2024年度
  • 研究担当者 : 落合将暉、鎌田えりか
  • 発表論文等 :
    • Ochiai S. and Kamada E. (2026) The Horticulture Journal 95:70-79
    • 落合、鎌田(2024)職務作成プログラム「加工・業務用ホウレンソウの収量予測プログラム」、機構-P37