気象の数値予報データを活用したタマネギべと病二次伝染予測システム

要約

気象の数値予報データを用いて、タマネギべと病被害を急激に蔓延させる二次伝染の発生日を事前に予測し、予防的防除により被害拡大を未然に防ぐことを可能にするシステムを開発した。

  • キーワード : 数値予報データ、タマネギべと病、二次伝染、濡れ時間、発生予察モデル
  • 担当 : 九州沖縄農業研究センター・暖地水田輪作研究領域・水田高度利用グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

2016年の春期はタマネギべと病(病原菌Peronospora destructor)が全国的に大流行し、特に西日本最大のタマネギ産地である佐賀県では本病のまん延により大きな被害が生じた。また、近年の気候変動により全国的に本病が蔓延しやすい気象条件の出現頻度が高まっているため、本病を効果的に抑制する対策技術が求められている。
そこで、本病原菌の発生生態を基本とし、本病を急激に蔓延させる二次伝染を推定する発生予測モデルを開発する。さらに毎日最新の気象の数値予報データを用いて自動計算させることで、3日先までの本病の二次伝染成立日を予測し、その結果を元に適期防除日を出力する機能を有するシステムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、領域気象モデルWRFを用い気象の全球数値予報データを1km格子データへダウンスケーリングを行う気象データの計算部と、二次伝染判定プログラムから構成される。
  • 本病の二次伝染の成否は、タマネギ葉の「濡れ時間」として数値予報データから計算し、判定できる(図1)。
  • 代表的なべと病(Downy mildew)の発生予察モデルであるDowncastモデルに基づき、本菌の胞子形成、生存、伝染成立の3条件が連続して成立した場合に二次伝染が生じると判定するモデルを開発した(図2、表1)。実験圃場(熊本県合志市)におけるモデルの予測精度は、二次伝染予測日の適中率が69.3%、空振り率が29.5%、見逃し率が1.2%と実用上十分な予測性能を持つ(データ省略)。
  • 本システムでは、二次伝染成立の予測結果を元に、現地タマネギ栽培圃場で、本病の二次伝染を抑止するために3日先までの、防除の必要性を示す情報を「防除必須日」、「伝染の可能性がある要注意日」、「防除の必要の無い日」の3段階で表示できる。
  • データ駆動型「遠隔営農支援プロジェクト」において開発が進められている遠隔営農支援システム上で、スマートフォンのLINE画面に表示される防除支援情報(2026年1月時点では秋田県限定)を利用できる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本システムの利用により、必要な時のみ防除することで、薬剤散布の回数を削減できる可能性がある。
  • 本システムは二次伝染が成立する気象条件を予測するものである。本システムが有効な条件は、これまでに本病の発生が確認されていて伝染源の存在が認められ、一定の潜伏期間を経た一次伝染株(越年罹病株)が存在する圃場でのタマネギ栽培での利用に限定される。
  • システムが提供する情報の水平解像度は1km、予測期間は3日である。現在試験的に運用可能なエリアは、九州地方、北陸地方、東北地方に限定される。

具体的データ

図1 二次伝染発生日(2018年4月18日)における植物の濡れに関係する数値予報データ(赤線)と観測値(上:降水量(青)、下:濡れセンサ出力(緑))の比較,図2 タマネギべと病菌の発生生態に基づき二次伝染の成否を判定するアルゴリズム,表1 二次伝染各プロセスにおける具体的気象条件,図3 スマートフォンのLINE画面に表示された秋田県営農試験地の防除の必要性を示す情報

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(地域戦略プロジェクト、スマート農業技術の開発・実証・実装プロジェクト)
  • 研究期間 : 2016~2019年度、2024年度
  • 研究担当者 : 柴田昇平、園田亮一、井手洋一(佐賀県農試研セ)、古田明子(佐賀県農試研セ)
  • 発表論文等 :
    • 柴田ら(2018)九州の農業気象、27:30-31
    • 井手ら(2022)九州病害虫研究会報、68:22-35
    • 農研機構(2025)「領域気象モデルWRFを活用したタマネギべと病二次伝染予測標準作業手順書」
      https://sop.naro.go.jp/document/detail/213 (2026年2月公開)