やや大粒で倒伏しにくいハトムギ新品種「つやかぜ」

要約

「つやかぜ」は、主力品種の「あきしずく」に比べて草丈が低く倒伏しにくいため、収穫しやすい。やや大粒であるため、子実利用等では原料取引に有利である。収量、葉枯病抵抗性、難脱粒性は「あきしずく」並みに優れる。

  • キーワード:ハトムギ、中生、葉枯病、短稈
  • 担当:基盤技術研究本部・遺伝資源研究センター・植物資源ユニット
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ハトムギは水田転作作物として、また健康的なイメージから注目されており、作付面積も伸びている(616ha:2013 → 1,133ha:2019)。用途は茶・複合茶原料のほか、食用、薬用、化粧品等にも用いられ、年間約8,500tが消費されているが自給率は18%(2018)である。近年は海外原料価格も高騰傾向で内外価格差は縮小し、高品質で信頼できる国産増産への期待が高い。主力品種の「あきしずく」は、風雨による倒伏が問題となったり、やや小粒であることで原料取引や子実利用時に不利になることがある。このため、倒伏しづらく、粒が大きい品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「つやかぜ」(旧系統名:関東2号)は、主力品種の「あきしずく」(JP251012)を母、短稈や難脱粒性の系統を親にした交配第一世代「C0710 F1」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
  • 「つやかぜ」は「あきしずく」に比べて草丈が低く倒伏しづらいため、倒伏による品質低下が少なく、収穫しやすい(表1、図1)。
  • 「つやかぜ」は「あきしずく」よりもやや大粒で、殻実の百粒重が重く、子実もやや大きい(表1、図2)。子実利用等では原料取引に有利である。
  • 「つやかぜ」は「あきしずく」と成熟期は同程度の中生で難脱粒性を持ち、収量、葉枯病抵抗性も同様に優れる(表1)。
  • ハトムギ茶やハトムギご飯に利用できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地・温暖地・寒冷地の一部(「あきしずく」栽培地域)に適する。
  • 葉枯病には強いが、完全な抵抗性ではないので、適宜防除に努める。
  • 種子用・薬用では、花粉の飛来による混種や品質低下を防ぐため、他品種やジュズダマの近く、他品種の野良生えが想定される場所では栽培しない。
  • 製茶加工では、焙煎条件の検討も必要であるが、「あきしずく」と異なる新たな素材として利用できる。

具体的データ

表1 収量調査成績(茨城県つくば市、2018-2020年の平均),図1 草姿(左:つやかぜ、右:あきしずく),図2 殻実(上)および
殻剥き後の子実(下),表2 実需者評価結果

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(イノベーション創出強化研究推進事業)
  • 研究期間:2008~2020年度
  • 研究担当者:高田明子、西澤けいと、松井勝弘、竹島亮馬、大潟直樹、加藤晶子、手塚隆久、鈴木達郎、原貴洋
  • 発表論文等:高田ら「つやかぜ」品種登録出願公表第35387号(2021年8月5日)