水中のペルフルオロオクタンスルホン酸及びペルフルオロオクタン酸を除去する資材

要約

水質浄化に用いる多様な有害物質吸着資材の中から、ペルフルオロオクタンスルホン酸及びペルフルオロオクタン酸に対して高い吸着・除去能を有し、かつ安価な活性炭資材を選定する。これらの資材は高度浄水処理技術への活用が期待できる。

  • キーワード : POPs、水、PFOS、PFOA、粉末活性炭
  • 担当 : 基盤技術研究本部・高度分析研究センター・環境化学物質分析ユニット
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs)条約に基づき、日本を含む世界185ヶ国で規制されているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)による水質の汚染が、地球規模で深刻化している。国内では水質の暫定的な目標値として、PFOS・PFOAの合算の含有量を50 ng/Lと設定したものの、この目標値を超過する事例が多発しており、懸念が高まっている。
そこで、水中に残留するPFOSとPFOAの浄化に特化し、これらに対する除去効果が優れている安価な資材を選定する。これにより、国内外の飲料水を含む環境水の安全性確保の基盤となる高度な浄水処理技術を提供し、社会実装の実現を目指す。

成果の内容・特徴

  • 従来から水質浄化の目的に使用されている資材を含め、現場で容易に普及できるように安価な活性炭資材を対象に、水中のPFOSとPFOAの除去率を比較した。これらの資材は、形状、原材料、水素イオン指数(pH)、比表面積において、それぞれ特徴を有する(表1)。
  • 粉末活性炭資材PAC#1、#2、#3は、従来の水浄化資材(GAC)に比して安価であり、PFOSおよびPFOAの除去率は有意に高く、その除去率はいずれも9割以上である。その中でもPAC #3は、極少量の濃度でも水中のPFOSとPFOAを吸着し、除去する資材として有効である(図1)。
  • 粉末活性炭資材のうちPAC#1、#2、#3の除去率は、資材濃度10 ppmにおける比較で従来の水浄化資材(GAC)の除去率と比べ、2.5倍程度高く、選定した資材の利用により吸着、除去資材の投入量を低く抑えることができる(図1)。
  • PAC#4は、他の粉末活性炭に比べ、比表面積が大きいにもかかわらず、水中のPFOSとPFOA除去率は低い(図1)。従来、水質浄化のための除去資材の選定は比表面積にのみ基づき行われていたが、少なくとも水中のPFOSおよびPFOAの除去においては、比表面積だけでは除去率を正確に評価できず、吸着資材の形状、比表面積に加えて、資材の孔隙のサイズ・数・分布や、除去ターゲットとの親和性、資材のpHを考慮して選定する必要がある(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は実験室規模の添加回収の結果である。現場への適用に際しては、改めて確認が必要である。
  • 本成果で検討された資材は、土壌汚染対策や廃棄物処理等様々な適用場面への応用が想定されるが、その際は改めて確認が必要である。

具体的データ

表1 活性炭吸着剤の情報,図1 各種活性炭資材による水中のPFOS及びPFOA除去率,図2 粉末活性炭による水中のPFOS及びPFOAの吸着・除去モデル

その他

  • 予算区分 : 交付金、資金提供型研究
  • 研究期間 : 2020~2021年度
  • 研究担当者 : 殷熙洙、島村紘大(フタムラ化学(株))、浅野拓也(フタムラ化学(株))、山﨑絵理子、谷保佐知(産総研)、山下信義(産総研)
  • 発表論文等 : Eun H. et al. (2022) Environmental Monitoring and Contaminants Research 2:88-93