要約
プログラミング初心者でも物体検出機能を簡単に実装できるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を具備したプログラムである。このプログラムにより、AIモデルの開発やパラメータチューニング作業が比較的容易に実行でき、開発の効率化・加速化が期待できる。
- キーワード : 物体検出、GUI、PyTorch、MMDetection、detectron2
- 担当 : 基盤技術研究本部・農業情報研究センター・AI研究推進室・確率モデルユニット
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
AIモデルの開発では、判別器の開発・改良においては、複数のAIモデルを試したり、パラメータをチューニングしたり、様々な試行錯誤が不可欠である。現在、AIモデルの開発・改良の現場では、通常Pythonなどの開発環境下でライブラリ(PyTorch、MMDetection、detectron2など)を呼び出すハードコーディングが必要で、さらには開発された判別器の精度評価もプログラムとして記述する必要がある。とりわけ、一枚の画像の中から病班部位を検出する(=オブジェクト検出)機能を実現するには、複雑なニューラルネットワークを実装する必要がある。そこでプログラミング初心者やAIになじみのない研究者でも、物体検出器の開発と学習済み物体検知器の実行を簡単に実装できるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を具備したプログラムを開発した。これにより、AIモデルの開発やパラメータチューニング作業がこれまでのハードコーディングに比べて容易になる。さらに、利用目的を限定せずに無償で利用できるため、様々なAI開発での効率化・加速化が期待できる。
成果の内容・特徴
- JustDeepItは、深層学習を使用した物体検出モデルを、グラフィカルユーザーインターフェース操作で比較的容易に構築できるプログラムである(本プログラムに関するオンラインマニュアル、 https://justdeepit.readthedocs.io/)。a. Object Detection(矩形タイプの物体検出)、b. Instance Segmentation(ポリゴン型の物体検出)、c. Salient Object Detection(前景抽出)の各物体検出手法が選択できる(図1)。
- JustDeepItの物体検出モデルは、Python環境で標準的に使われるPyTorch、MMDetection、およびdetectron2などのパッケージを内部的に呼び出して使用する。通常は膨大なコーディング作業が必要な、パッケージの選択、モデルの設定、学習の実行、学習済みモデルによる物体検出、などの作業がGUI上で直感的に実行できる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 農研機構職務作成プログラムとして無償公開中で(MITライセンス、農研機構登録番号:機構-ZC16)、GitHubからもダウンロード可能である(https://github.com/biunit/JustDeepIt)。Python環境が利用可能なパーソナルコンピューターやワークステーション、クラスター計算機上にパッケージを展開できる。
- JustDeepItを利用することで、これまで機械学習になじみのなかった実験系生物学者やフィールド生態学者などが手軽に自前で物体検出モデルを構築することが出来るようになる。
- JustDeepItは、コマンドラインプログラムにエクスポートすることが可能である。JustDeepIt以外のモジュールと組み合わせて大規模網羅的な開発に使用するなど、発展的に利用できる。
具体的データ
その他
- 予算区分 : 農林水産省(戦略的プロジェクト研究推進事業:AIを活用した病害虫診断技術の開発)、文部科学省(科研費)、その他外部資金(内閣府官民研究開発投資拡大プログラム)
- 研究期間 : 2021~2022年度
- 研究担当者 : 山中武彦、孫建強、曹巍
- 発表論文等 : Sun J. et al.(2022)Front. Plant Sci. 13:964058