育成者権侵害判定を目的とした画像による品種識別システム

要約

育成者権侵害判定を目的とした、成葉、果粒、果実、休眠枝や緑枝の穂木等の植物の器官などの撮影画像を用いた深層学習(AI)による品種識別システムである。本システムにより、登録品種の税関、栽培圃場、生産物や苗の無断販売などにおける迅速な育成者権の侵害判定での活用が期待される。

  • キーワード : 育成者権侵害、品種識別、画像、深層学習
  • 担当 : 基盤技術研究本部・農業情報研究センター・AI研究推進室・画像認識ユニット
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

国内外において育成者権保護が強化されているが、専門家以外では育成者権の侵害判断が困難である。従来は栽培試験による品種登録簿上の特徴比較が原則であったが、立証まで長時間を要するため、最近ではDNA品種識別などの新しい技術による侵害立証の容易化が図られている。しかし、DNA品種識別は高精度での識別が可能であるが判定までに数日間を要する。そのため、本研究では、簡便にリアルタイムでの登録品種識別が可能な手法の構築を目指し、植物の器官の画像から深層学習を利用した品種識別手法の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 1年目には、ブドウとリンゴについて類似品種を各3種類(ブドウ:シャインマスカット、ロザリオビアンコ、マスカットオブアレキサンドリア;リンゴ:ふじ、錦秋、王林)選定して、穂木、葉、果粒、果実、の画像を収集する。2年目には、1年目品種に加えてブドウ3品種(サニーハート、クイーンニーナ、安芸クイーン)とリンゴ1品種(紅つるぎ)の画像を収集する。
  • ブドウは穂木、葉の表裏、摘果時と収穫時の果粒を、リンゴは穂木、葉の表裏、果実の上下について黒色の背景上に設置して全体が画角に入るように真上から撮影し、対象物が中心となるように切り出す(表1)。なお、画像は3種類のスマートフォン(SONY Xperia 10IV、Google Pixel 7、Apple iPhone 13 Mini)で撮影する。
  • モデルの学習においては、撮影した画像を訓練データ、検証データ、テストデータに分割して使用する。モデルのプロトタイプの構築に使用した1年目の画像の枚数を表2に示す。学習には3種類の分類モデル(VGG16、ResNet50、Vision Transformer)を使用する。
  • 1年目のテストデータによる各分類モデルの精度評価結果を表3に示す。分類モデルにより正答率が若干変化するが、穂木以外の部位ではいずれかのモデルで正答率が100%であり、穂木ではブドウで98.8%、リンゴで97.8%である。2年目の画像によるプロトタイプモデルの精度評価では、ブドウでは葉86.7%以上である。
  • 学習済みモデルの実装例として作成したスマートフォンアプリを示す(図1)。スマートフォンで撮影から品種判別まで約3秒で完結できる。

成果の活用面・留意点

  • 迅速な育成者権の侵害判定を必要とする、税関、栽培圃場、生産物や苗の無断販売などでの利用を想定している。
  • 本研究の精度評価結果は特定の圃場で2年間に収集されたデータのみを使用した結果であるため、異なる圃場のデータを用いた場合には精度が低下する可能性がある。
  • 本研究で対象とした品種以外を判別する場合は、新たに対象とする品種の画像データを収集する必要がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : その他外部資金(農林水産省:育成者権管理機関支援事業)
  • 研究期間 : 2023~2024年度
  • 研究担当者 : 林志炫、杉浦綾、石原光則、大石優、岩﨑千沙、薬師寺博
  • 発表論文等 : 林ら、特願(2024年10月30日)