要約
ダイズの収穫時に莢が弾けて子実が地面に落ちてしまうことによる収穫損失を減らすため、莢の内側の繊維層が薄くなるアズキの遺伝子変異に関する情報をダイズに応用し、莢が弾ける割合を大幅に減らしたダイズの変異系統を開発する。
- キーワード : アズキ、収穫損失、ダイズ、GmMYB26遺伝子
- 担当 : 基盤技術研究本部・遺伝資源研究センター・植物資源ユニット
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
食料安全保障の観点から、海外への依存度が高いダイズの収量向上は重要な課題である。収量向上には、実る子実を増やすだけでなく、収量損失を減らす必要がある。ダイズ栽培では、収穫前に莢が弾けて子実が地面に落ちることで、潜在的収量の約2割を失うことがある。さらに気候変動に伴う高温や乾燥、人手不足による収穫作業の遅れ、機械収穫時の物理的刺激は、莢が弾けることによる収量損失を増やす要因となる。このような背景から、農研機構では海外品種のPdh1遺伝子変異に由来する莢の弾けにくさを導入した品種群を開発しており、その作付面積は1万haを超えている。しかし、栽培規模の拡大や温暖化の進行に伴い、さらに莢が弾けにくい品種が求められており、新たな育種素材の開発が必要とされている。
本研究の目的は、ダイズとは別種であるアズキの莢の弾けにくさに関わる遺伝子VaMYB26の変異をダイズで模倣することにより、ダイズの莢の弾けにくさを強化することである。
成果の内容・特徴
- ダイズの既存品種「エンレイ」に4座のGmMYB26相同遺伝子の変異を集積した四重変異体は、繊維の主成分であるリグニン、セルロース、ヘミセルロースの含量が減少し、莢の内側の繊維層が薄くなる(図1および図2)。「エンレイ」にPdh1遺伝子変異を戻し交配により導入した「えんれいのそら」と比較して、GmMYB26四重変異体はさらに莢が弾けにくい(図3)。
- 変異遺伝子座の組合せが異なる2系統のGmMYB26二重変異体は「エンレイ」と比較して、わずかに莢が弾けにくい(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本研究で開発されたGmMYB26四重変異体と2系統のGmMYB26二重変異体は、莢が弾けにくい品種を開発するための育種素材として活用できる。これらの系統はPdh1遺伝子変異を有していないことから、Pdh1遺伝子変異にGmMYB26四重変異またはGmMYB26二重変異を組み合わせることで、さらに莢の弾けにくい品種を開発できる可能性がある。
- GmMYB26四重変異体では茎の繊維含量の減少が観察されているため(図2)、圃場で栽培した場合の収量や栽培特性を確認する必要がある。
- 本研究で開発した変異系統は、化学的突然変異誘発物質であるメタンスルホン酸エチルを処理して作出された突然変異体に由来し、戻し交雑を実施していないため、GmMYB26遺伝子以外にもゲノム中に多くのDNA変異が存在する可能性がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2018~2024年度
- 研究担当者 : 高橋有、竹島亮馬、加賀秋人、中田隆、内藤健、石本政男
- 発表論文等 :