栄養素・機能性成分の不足に基づくAI個別化食材提案システム

要約

本システムは、個人の属性や健康目標、食事内容に基づき、AIが不足成分を特定・評価した上で、その重要度に基づいて優先的に補うべき成分を判定し、対応する食材を提案する。本システムにより、不足成分を補う個別化栄養の提案が可能となり、食生活の改善を支援できる。

  • キーワード : 食品成分データベース、機能性成分、個別化栄養、SHAP、確率論理推論
  • 担当 : 基盤技術研究本部・農業情報研究センター・AI研究推進室・多変量解析ユニット
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

食生活の乱れや栄養バランスの偏りは、軽度な体調不良や生活習慣病などの健康リスクにつながる。その解消には、個々人の健康状態に応じて不足している栄養素や機能性成分を正確に把握し、それらを補う食材を提案する「個別化栄養」が重要となる。しかし、従来の健康管理アプリでは、摂取量の偏りは確認できるものの、個人の属性・食事内容等に基づいた量、食材を正確に示すことは困難である。そこで本研究では、機能性成分を含む拡張型の食品成分データベースを構築するとともに、SHAP(SHapley Additive exPlanations)による説明可能なAIと、不確実なデータにも対応可能な確率論理推論を組み合わせることで、不足している栄養素・機能性成分を定量的に評価し、それらを補うための食材を優先付けして個別に提案できる食解析システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 従来の栄養管理民間サービスとの違いおよび優位性を表1に示す。
  • 本システムは、ユーザー情報と健康目標に基づき必要な栄養素・機能性成分の推奨量を算出する機能(エンジン1)、摂取状況との比較から不足成分を抽出する機能(エンジン2)、さらに抽出された成分情報をもとに重要度を評価し、補うべき成分の優先順位を決定した上で、それに対応する食材を提案する機能(エンジン3)から構成される(図1)。
  • 説明可能なAI手法であるSHAPを用いることで、体調に関する予測モデルにおける栄養素・機能性成分の寄与を定量的に評価し、その重要度ランキングに基づいて関連要因を明確化している。
  • 本システムは、確率論理推論を用い、食事記録に含まれるばらつきや記録漏れといった不確実性を考慮しつつ、栄養素・機能性成分の重要度を評価する機能を備えている。
  • これらの機能により、本システムでは、不足状況、寄与度および重要度を踏まえた優先順位付けの過程を示すことができ、食材提案に至る判断根拠を説明できる点に特徴がある。
  • 食品研究部門が整備した食品・機能性成分データを基盤に、農業情報研究センターではAIを用いた提案生成アルゴリズムの開発を担当しており、推論および優先順位付けの過程を説明可能な形で実装している。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、個々人の不足栄養素および機能性成分を特定し、それらを補う食材を提案できるため(図2、図3)、健康支援サービス、企業のヘルスケアアプリ、管理栄養士による栄養指導、食品メーカーのレシピ開発やレコメンドサービスなど、幅広い領域での活用が期待される。
  • 個別化栄養に関する提案の判断根拠を定量的に示すことが可能であるため、研究用途に加え、行政が実施する健康施策や食育施策の高度化にも貢献し得る。
  • 本システムは現在、概念実証段階にあり、食品数2481件、料理名1497件、栄養素33項目、機能性成分88項目を含む約86MBのデータベースを用いて、動作確認および性能検証を行っている。今後、社会実装に向けては、現実のユーザーが摂取する料理の多様性に対応するため、対象食品、料理および機能性成分に関するデータを充実させ、データベース内容をさらに整備する必要がある。

具体的データ

表1 従来の栄養管理民間サービスとの違いおよび優位性,図1 AI個別化食材提案システムの流れ,図2 AI個別化食材提案システムの入力イメージ,図3 AI個別化食材提案システムの出力イメージ

その他

  • 予算区分 : SIP
  • 研究期間 : 2023~2025年度
  • 研究担当者 : 權娟大、山本万里、木元広実、河合崇行
  • 発表論文等 :
    • 權ら(2024)人工知能学会全国大会論文集、38:3Xin2-96
    • 權ら、特願(2025年3月14日)