施設果菜類の収量予測と施設制御方法

要約

収量予測方法は非線形時系列解析と機械学習を組み合わせた新規のアルゴリズムであり、施設制御方法は非線形時系列解析の1手法を応用して計算する。本手法を用いることで施設果菜類の生産性の向上が期待される。

  • キーワード : 機械学習、非線形時系列解析、数理最適化、Empirical Dynamic Modelling、追加学習
  • 担当 : 基盤技術研究本部・農業情報研究センター・AI研究推進室・確率モデルユニット
  • 代表連絡先 :

背景・ねらい

近年、IoTの進展と普及により、施設栽培のデータが収集、蓄積されつつあり、こうしたデータの活用が期待されている。特に施設栽培作物では出荷計画や生産調整のために収量予測や施設の制御にこれらのデータを活用するニーズが強いものの、手法の開発と普及は進んでいない。そこで本研究の目的は、代表的な施設果菜類の作物であるキュウリ、ナス、ピーマンの3作目を対象として、これらの収量予測と施設制御のアルゴリズムを新規に開発することである。

成果の内容・特徴

  • 収量予測方法では、収穫が連続的に行われる施設果菜類の収量データと、気温や湿度といった環境データを組み合わせた時系列データを用いて、未来7日間の総収量を予測する。
  • この予測プロセスでは多くの前処理を含む(図1)。環境変数については任意の期間の時間遅れや移動平均、1階差分を特徴量に加える。収量については累積収量にLOESS(重み付け局所平滑化曲線)をあてはめて残差とLOESS曲線に分解したものを特徴量に加える。
  • 膨大に増加した特徴量のうち、目的変数である未来7日間収量に対して時系列因果のある特徴量のみを因果推定法を用いて抽出し、不要な特徴量を削減する。こうして得られたデータフレームを勾配ブースティング法によりモデリングし、予測を行う。
  • このアルゴリズムを用いてキュウリ、ナス、ピーマンの未来7日間収量を予測させると、キュウリの収量予測の誤差率(Mean Absolute Percent Error(MAPE)、平均絶対誤差率)は4.45%、ピーマンでは3.80%、ナスでは3.12%となり、いずれも誤差5%未満となっており高精度を達成している(図2)。
  • 施設制御方法は、非線形時系列解析のS-mapを応用した手法である。S-mapは、適切な時間遅れの情報を含む時系列データを多次元空間に埋め込み、局所的な重みづけ回帰を行うことでその時点での説明変数の影響を推定する手法である。この手法を施設制御に応用し、各環境パラメータが収量に与える影響の時間変化を推定できる(図3)。そこで、ある時点で収量に対する負の影響が最も大きい環境パラメータを特定し、環境改善を提案する。
  • RのShinyを用いて作成したデモアプリにキュウリの栽培環境データと過去収量データを入力すると、収量の予測値と施設制御の提案が出力される。施設制御では、多くのパラメータのうち、日中の最高気温が最も収量に悪影響を与えていることが推定されたため、「日中の最高気温が高いようです。下げてみましょう。」と提案している(図3)。
  • この施設制御アルゴリズムを用いて収量が増加するかシミュレーションを行って調べると、対象期間のキュウリの予測収量が、観測された実際の収量に比べて28%増加する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • これら2つのアルゴリズムはキュウリ、ナス、ピーマンを主な対象として開発されたものの、他の施設果菜類であるメロン、スイカなどのウリ科作物やトマト、ししとうなどのナス科作物などにも適用が期待される。
  • 開発した収量予測および施設制御の手法については特許出願に至っている。
  • RのShinyを用いたアプリケーションが完成しており、日別の環境データと日別の収量データを入力することで未来7日間の収量を予測し、さらに改善すべき環境条件を特定できる(例 :「日中の最高気温を下げましょう」)。これらは職務作成プログラム「施設果菜類の収量予測および環境制御プログラム」(https://www.naro.go.jp/collab/program/laboratory/rcait/177339.html)として登録されている。
  • 基本モデルを用いたアンサンブル学習手法を行うことで、2週間程度の短いデータでも精度の高い予測を行うことができる。
  • 今回用いたデータセットではいずれの作目でも誤差(MAPE)が5%未満となったが、他の作目や品種などで同様の結果になるとは限らないので留意が必要である。

具体的データ

図1 収量予測アルゴリズムの概念図,図2 非線形時系列解析と機械学習を組み合わせた収量予測の結果,図3 デモアプリで計算した施設制御の出力画面,図4 施設制御アルゴリズムを用いたシミュレーション結果

その他

  • 予算区分 : BRIDGE
  • 研究期間 : 2023~2025年度
  • 研究担当者 : 岸茂樹、細野達夫
  • 発表論文等 :
    • 岸、細野、特願(2026年1月30日)
    • 岸、細野、特願(2026年1月30日)