要約
市販のとろけるチーズ製品の溶融性と伸展性をレオロジー特性と構造特性から明らかにする。チーズの溶融挙動には弾性より高い粘性が必要となり、また強固な構造が不可欠である。チーズの溶融挙動を効果的に設計するための評価法確立に貢献できる。
- キーワード : チーズ、溶融性、伸展性、レオロジー特性、構造特性
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
植物性チーズ様食品の溶融挙動である溶融性と伸展性については、実際にはまだ迅速かつ効果的に制御されていない。そこで本研究ではとろけるチーズのレオロジー特性および構造特性と溶融挙動を関連付ける。今後、レオロジーや構造などの指標をコントロールすることによって、望ましい溶融挙動をもつ植物性チーズ様食品を提供することが期待できる。
成果の内容・特徴
- 市販動物性チーズには良い溶融性と伸展性が見られたのに対し、市販植物性チーズ様食品には十分な溶融性と伸展性が見られない製品が含まれる(図1)。
- 加熱により、低い弾性をもつ動物性チーズは粘性が高くなり、損失係数が1より高く、流動性を示すのに対し、高い弾性をもつ植物性チーズは低い粘性を保持し、損失係数が1より低く、常に固体性質を示す(図2)。
- 溶融状態のチーズには融合した構造が観察され、引っ張ることによって動物性チーズではストランド構造が形成されるのに対し、植物性チーズ様食品ではクラックが生じ、伸展しない(図3)。
成果の活用面・留意点
- 構造特性とレオロジー特性は植物性チーズ様食品の加熱溶融性を開発する上で有効な評価指標となる。
- チーズの溶融挙動を設計するには、弾性より粘性のほうが高く、構造的クラックが生じないような堅さを要する。
- 試験したサンプル数が少ないため、本報告と異なる挙動を示す事例も想定される。
- 市販植物性チーズが市販動物性チーズとは明確に異なる溶融挙動を示す一方、市販動物性ナチュラルチーズとプロセスチーズで観察された挙動の違いが両者の製法の違いに起因するのかについては今後の検証を要する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 文部科学省(科研費)
- 研究期間 : 2019~2021年度
- 研究担当者 : 付惟、矢野裕之(食研)
- 発表論文等 : Fu W and Yano H. (2022) International Journal of Dairy Technology 75(4):874-881