要約
マイクロ波減圧乾燥と予備凍結を組み合わせた乾燥プロセスにより、真空凍結乾燥品に類似する乾燥青果物を短時間で製造できるとともに、粉砕後の粒子は均一化・微細化されることを示した。本提案手法は真空凍結乾燥の代替として利用可能性があり、パウダー加工等への利用が期待できる。
- キーワード : マイクロ波減圧乾燥、予備凍結、青果物、多孔質化、パウダー加工
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
乾燥青果物の工業生産においては通風乾燥などの人工乾燥が一般的であり、生産性向上に向け、乾燥の効率化が求められている。人工乾燥の中でもマイクロ波減圧乾燥は、試料を低温の状態に維持しつつ、乾燥できることに加え、従来の乾燥法と比べて乾燥時間を大幅に短縮することができる。一方で、マイクロ波減圧乾燥では条件によって乾燥過程で著しい収縮等の変形を起こす場合がある。本研究では、青果物凍結時に組織内部が物理的に破壊される現象を利用し、乾燥加工中における試料変形の抑止に利用することを試みるとともに、得られた乾燥物のパウダー加工への適用可能性を検討する。
成果の内容・特徴
- ジャガイモ切片を試料として用い、-30°Cに設定したフリーザーにて予備凍結後、マイクロ波減圧乾燥を行い、従来の熱風乾燥および真空凍結乾燥との比較を行う。
- 従来の熱風乾燥では予備凍結の有無にかかわらず、乾燥中に著しい試料収縮が生じるが、マイクロ波減圧乾燥-予備凍結ありの条件では、真空凍結乾燥に類似した多孔質な乾燥試料が得られ、かつ凍結に要する時間を含めても乾燥時間を大幅に短縮することができる (図1)。
- 多孔質な構造を持つ真空凍結乾燥、マイクロ波減圧乾燥-予備凍結ありの試料から回転刃式の粉砕機を用いて作製した粉体は、他の乾燥試料と比べて均一化・微細化されやすく、粒子径分布は高いピークを示し(図2)、平均粒子径は小さくなる(表1)。
成果の活用面・留意点
- 予備凍結ありのマイクロ波減圧乾燥により短時間で多孔質の青果物乾燥試料を作製できることから、真空凍結乾燥製品の代替としての利用が考えられる。
- 今後、処理圧力やマイクロ波出力条件と品質特性の関係を詳細に調査するとともに、実規模スケールでの実験を行いその有効性を検証する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(ムーンショット型農林水産研究開発事業)
- 研究期間 : 2020~2022年度
- 研究担当者 : 安藤泰雅、根井大介
- 発表論文等 : Ando Y. and Nei D. (2022) Food Bioproc. Tech. doi:10.1007/s11947-022-02941-x