要約
脱脂大豆などについて、粉体の粒径を10 μm以下の超微粉から90 μm以上にまで調整して、3Dフードプリンターでの成型性とプリント食品の表面構造の関係を評価した。成型性は粒径によって大きく異なり、微粒子では表面構造が滑らかなプリント食品を製造することができる。
- キーワード : 粉体加工、3Dフードプリンター、微粒子、成型性、表面構造
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
3Dフードプリンターは従来の製造技術よりも複雑な造形を可能とする利点がある。3Dプリント食品を設計通りに成型するためには、3Dフードプリンターの諸条件とともに、原料となるペーストの物性が重要な役割を果たす。本研究では、各種の粒度に調整した粉体を水に分散させることによりペーストを作製し、粉体の粒度が3D成型性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。また、粉体の粒度と3Dプリント食品の表面構造の関係から食感制御の可能性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ジェットミルでは、高速ジェット気流により粒子が加速され、衝突板と衝突することで粉砕される。脱脂大豆をジェットミルで粉砕することにより、粒径(D50)が10 μm以下の微粒子を得ることができる(表1)。なお、D50は粒度の累積分布が50 %となるときの粒径を表す(累積分布が10 %、および90 %の場合にはD10およびD90と表す)。また、スパン値は1.3であり、粒子サイズの均一性が非常に高い粉体が得られる。スパン値は粒度分布の幅を特徴づける指標であり、数値が低いほど均一性が高いことを意味する。ハンマーミルは衝撃力を利用した粉砕機であり、幅広く利用されており、ジェットミルと比較して粒度が大きく均一性が低い粉体が得られる(表1)。
- 3Dフードプリンターによる射出条件を固定した条件では、含水率が同じペーストであっても、粉体の粒径が異なると3D成型性が大きく異なる(表2)。また、じゃがいもの場合、乾燥前のブランチング条件と粒径の両者が3D成型性に多大な影響を与え、造形に最適な水分範囲が異なる。
- 微粒子を原料としたペーストでは、3Dプリント食品の表面構造が滑らかとなり(図1)、粒子サイズを調整することにより、舌触りなどの食感を制御することが可能になる。
成果の活用面・留意点
- 3Dフードプリンターの高度利用を図る場合、同一素材を用いても粒径が異なると最適な水分条件が異なることに留意する必要がある。
- 原料となる粉体の粒径を調整することにより、舌触りなどの食感を制御することが可能になる。
- 加熱調理後の食感の変化については未検討であり、今後の知見の集積が必要となる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(ムーンショット型農林水産研究開発事業)
- 研究期間 : 2020~2022年度
- 研究担当者 : 根井大介、安藤泰雅、佐々木朋子
- 発表論文等 :
- Nei D. et al.(2022)Food Sci. Technol. Res. 28:207-216
- Nei and Sasaki. (2023) J. Food. Eng. 337:111237