キャベツの芯を粗粉砕した新食品素材

要約

乾燥・粗粉砕して粒の大きさを調整したキャベツの芯を用いることで、歯ごたえのあるペースト状食品を調製できる。これを3Dプリント食品等の次世代食品へ適用することで、廃棄部位の高度利用に寄与するとともに、食感付与によって食品加工の幅を拡げるものと期待される。

  • キーワード : キャベツ芯、廃棄部位、粉末、食感、3Dプリント食品
  • 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・バイオ素材開発グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

キャベツの芯は、腐敗しやすく可食部である葉と比べて硬いために、多くの場合、加工段階でキャベツから切り離されて廃棄される。その一方で、この芯には、食物繊維に加え、ビタミンCなどの栄養やクロロゲン酸などの機能性成分が含まれていることから、フードロス削減のため、乾燥微粉末への加工が試みられてきた。しかしながら、微粉末化すると生鮮食品の食感が消失し、用途が限定されることが課題となる。そこで本研究では、次世代食品加工技術として注目される3Dプリント食品の製造を目指し、キャベツの芯の利用拡大に向けた新たな利用方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • キャベツから芯を切り出し、ブランチング、裁断、乾燥後に粉砕して調製した1ミリメートル未満の粗粉末(図1左)を吸水後に押し潰して変形させて、処理前後の面積比を変形率(%)とする。芯由来の粗粉末は、キャベツ葉から同様に調製した粗粉末(図1右)と比べて変形率が低く、潰れにくい素材となる(図2)。
  • この粗粉末に水、ナタピューレ(ナタデココを水溶性多糖の共存下で分散させた素材)等を添加してペースト化し、シリンジの先端(ノズル内径8ミリメートル)から押し出すことで、粗い表面をもつ棒状の成形物を得る(図3)。凹凸をもつ表面は個性的な食感表現に寄与する一方で、押し出し時にペーストが切れやすくなる原因ともなり得る。
  • キャベツ葉由来の微粉末などの軟らかいペーストを与える素材との混合や加水量調整により、3Dフードプリンタで採用されている内径2ミリメートルのノズルを用いても、途中で切れることなく押出成形が可能となる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • カット野菜製造時に発生するキャベツの芯やブロッコリーの茎などの硬すぎて廃棄される食材の粉砕条件を制御することで、3Dプリント食品等の次世代食品に対して噛み応えなどの豊かな食感を付与できるものと期待される。
  • この粗粉末を用いた次世代食品加工の事例を増やし、カット野菜製造企業等と連携することで、この新素材の実用化を目指す。

具体的データ

図1 キャベツから調製した粗粉末,図2 加水した粗粉末を押し潰した後の変形率,図3 キャベツ芯由来の粗粉末をペースト化し押出成形して得た棒状食品,図4 筒先内径:2ミリメートルのシリンジからキャベツ由来ペーストを射出した際の組成による形状の違い

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(ムーンショット型農林水産研究開発事業)
  • 研究期間 : 2020~2022年度
  • 研究担当者 : 徳安健、山岸賢治、安藤泰雅、白井展也
  • 発表論文等 : Tokuyasu K., et al.(2022) J. Appl. Glycosci. doi:10.5458/jag.jag.JAG-2022_0003