要約
気温が低い時期に収穫したブロッコリーは、冷凍加工後に解凍した際の組織軟化が大きい。秋冬収穫ブロッコリーでは春収穫ブロッコリーと比較して、水溶性ペクチンの割合が増加し、春収穫ブロッコリーと比べて細胞同士の結びつきが弱く、軟化しやすいことが示唆される。
- キーワード : 冷凍野菜、ブロッコリー、組織軟化、ペクチン
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・食品加工グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
近年、冷凍野菜の需要は増加し続けている。野菜類は冷凍によって組織が軟化しやすく、解凍後の食感の低下が問題となるが、同じ野菜でも品種や生育段階の違いによって、解凍後の食感などの品質が異なることが経験的に知られている。しかし、その詳細なメカニズム・要因は明らかになっていない。そこで本研究では、冷凍野菜としての需要が高いブロッコリーについて、品種、収穫時のサイズ(花蕾の直径)および収穫時期の違いが冷凍による組織軟化に与える影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 5~6品種のブロッコリーを、秋冬(11~12月)に異なる3サイズ(花蕾径12 cm、15 cm、18 cm)、春(5~6月)に花蕾径15 cmで収穫した。ブランチング後に急速凍結を行い、解凍後のブロッコリーについて、硬さの指標である最大応力を圧縮試験により測定した場合、品種や収穫時のサイズに関わらず、秋冬収穫のブロッコリーは春収穫よりも解凍後の最大応力が減少し、軟化していることを示す(図1)。
- 収穫時期の気温(収穫4日前~収穫日までの平均)と、解凍後の最大応力は強い相関を示す(図2)。このように、収穫時期の気温が低くなるほど、解凍後に軟化しやすくなる。
- ペクチンは細胞と細胞をつなぐ接着剤のような働きをする細胞壁多糖類である。ペクチンの中でも水溶性ペクチンは細胞壁への結合が弱いため、この割合が増加すると細胞同士の結着が弱くなり、軟化すると考えられる。生鮮ブロッコリーのペクチン組成を調査したところ、秋冬収穫ブロッコリーでは春収穫ブロッコリーと比較して、水溶性ペクチンの割合が多い。したがって、秋冬収穫ブロッコリーでは春収穫ブロッコリーと比べて、細胞同士の結びつきが弱くなり、軟化していることが示唆される(図3)。
成果の活用面・留意点
- 寒さの厳しい時期(目安として日平均10°C以下)の収穫を避けることで冷凍ブロッコリーの過度な組織軟化を防ぎ、品質の安定化につながる。
- 気温が高いほど害虫が発生しやすいため、今後は外観や栄養成分なども含めた広範な調査が必要である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、民間資金等(資金提供型共同研究)
- 研究期間 : 2019~2022年度
- 研究担当者 : 西田菜美子、安藤泰雅、髙橋徳、大石麻南登、橋本朋子(ニッスイ)、竹村裕二(ニッスイ)、ビリヤラッタナサク チョテイカ(ニッスイ)
- 発表論文等 :
Nishida N. et al.(2024)Food Bioproc. Technol. 17, 2818-2829 doi:10.1007/s11947-023-03275-y