要約
麹菌熟成チーズ(以下、麹菌チーズ)は、市販カマンベールチーズと味の特徴が異なる。熟成に用いる麹菌によって外観や味の特徴に差が生じるため、多様な麹菌チーズの製造や他のチーズとの差別化が期待される。
- キーワード : カビ熟成チーズ、麹菌、Aspergillus oryzae、Aspergillus sojae、味覚センサー
- 担当 : 食品研究部門・食品加工・素材研究領域・バイオ素材開発グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
国産ナチュラルチーズの国際競争力強化を目的とし、麹菌で熟成させる新規カビ熟成チーズ「麹菌チーズ」を開発している。麹菌は、味噌、醤油、清酒などの日本の伝統的な発酵食品の製造に不可欠であるが、乳製品への活用事例はほとんどなく、チーズ熟成に利用することでカマンベールチーズのような既存のカビ熟成チーズとは異なる風味を呈することが期待される。先行研究において、麹菌チーズの呈味・香気成分を分析し既存のカビ熟成チーズ(カマンベールチーズ、ブリーチーズ、ブルーチーズ)と比較したところ、いずれとも一致しない特徴を示すことが認められている。本研究では麹菌チーズの味の特徴を示すことを目的とし、Aspergillus属麹菌5株(醤油用、味噌用など)を使用して表面カビ熟成チーズを製造し、味覚センサーを用いて市販カマンベールチーズと比較し、麹菌チーズの味質の特徴を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本研究に用いた5株の麹菌は、すべてチーズカード表面に生育することができ、菌株独自の外観を呈しながら、チーズ熟成に寄与する(図1)。
- 味覚センサーで分析した結果、熟成10日目の麹菌チーズは市販カマンベールチーズと比較して、"酸味"が弱く、"苦味雑味"、"渋味刺激"、"塩味"、"旨味コク"が強い(表1)。
- 麹菌チーズは市販のカマンベールチーズと味が大きく異なる。また、熟成に用いる麹菌株によっても味が異なる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 麹菌を用いてチーズを熟成することにより、市販カマンベールチーズとは異なる味の特徴を持つ、日本オリジナルの表面カビ熟成チーズを製造できる。
- 熟成に用いる麹菌を変えることにより外観や味に差が生じることから、様々な風味を持った麹菌チーズを製造できる。
- 麹菌チーズは財団法人蔵王酪農センターから販売されている。
- 本製品は、特開2021-129536の実施許諾により、製造・販売できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、農林水産省(革新的技術開発・緊急展開事業:経営体強化プロジェクト)
- 研究期間 : 2018~2023年度
- 研究担当者 : 林田空、萩達朗、小林美穂、楠本憲一、大森英之、冨田理、鈴木聡、山下秀行(樋口松之助商店)、佐藤薫(日獣大)、三浦孝之(日獣大)、野村将
- 発表論文等 :
- Hayashida S. et al. (2023) J. Dairy. Sci. 106:6701-6709
- 佐藤ら「麹菌による熟成チーズおよびその製造法」特開2021-129536(2021年9月9日)