全国農地の「肥効の見える化」を実現するための土壌環境API

要約

圃場一筆毎の土壌特性を確認できるAI-土壌図を用いて、土壌温度・水分推定モデル、緩効性肥料および有機質資材由来の肥料成分供給量を推定するモデルを組合せWAGRI上で動作するAPIである。本APIを利用して営農支援ソフト上で肥効の見える化を実現できる。

  • キーワード : AI-土壌図、土壌温度・水分、緩効性肥料、有機質資材、肥効の見える化
  • 担当 : 農業環境研究部門・土壌環境管理研究領域・土壌資源・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

営農の大規模化等に伴い、これまで生産者の経験に基づく圃場毎の地力に応じた施肥管理が困難となる中、圃場毎に肥料や有機質資材の「肥効を見える化」する需要が高まっている。施用した肥料や有機質資材の肥効は、日々刻々と変化する土壌温度・水分の影響を強く受けるため、土壌温度および水分データを圃場毎に推定した上で、農地に施用された肥料や有機質資材の種類、施用量および施用時期から肥効を推定する必要がある。
本研究では全国農地を対象に圃場一筆毎の「肥効見える化」を実現するため、圃場毎の土壌特性を調べることが出来るAI-土壌図を用いて、土壌温度・水分推定モデル、緩効性肥料養分供給モデルおよび有機質資材の肥効見える化モデルを組合せた土壌環境APIを開発し、WAGRIに実装する。

成果の内容・特徴

  • 土壌環境APIは、AI土壌図を基盤データとし、土壌温度水分推定API、肥料養分供給API、有機質資材の肥効見える化APIによって構成される(図1)。
  • 土壌環境APIと市販されている営農支援ソフトとのAPI連携により、化学肥料や有機質資材の肥効を一日毎に可視化でき、生産者は収量・品質の安定化や施肥コスト削減に取組むことができる(図1)。
  • 土壌温度・水分推定APIは、地点情報を基にAI-土壌図からは土壌物理特性値データを取得し、メッシュ農業気象からは気象データを取得する。これらパラメータを土壌温度水分推定モデルに入力することで圃場一筆毎に土壌温度・水分データを算出し、その推定データをWAGRIから配信することができる(図2)。
  • 緩効性肥料養分供給APIおよび有機質資材の肥効見える化APIは、土壌温度・水分推定APIとのAPI連携によって、その肥効を圃場毎に、そして一日毎に可視化することができる(図3)。緩効性肥料養分供給APIの推定対象肥料は被覆尿素肥料(ポリオレフィン系)であり、有機質資材の肥効見える化APIの推定対象資材は畜ふん堆肥(牛ふん、豚ふん、鶏ふん)、市販資材(植物油かす、魚粕等)、および緑肥である。
  • 有機質資材の肥効見える化APIは窒素、リン酸、カリの肥効を可視化することができ、化学肥料の利用低減を図ることができる。
  • 土壌環境APIの利用にあたっては、WAGRI利用申請を行う必要がある。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 土地利用型作物、露地野菜の営農支援ソフト等を開発しているWAGRI利用会員(図2参照)および公設試の土壌保全担当者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国農地
  • その他 : 土壌環境APIはWAGRI-統合農地データ取得APIの利用を前提としている。

具体的データ

図1 本研究の成果とその活用に関する概念図,図2 AI-土壌図およびメッシュ農業気象データを用いた土壌温度水分推定APIの開発,図3 土壌環境APIのデータフロー、API入力データおよびAPI連携による活用事例(施用した化学肥料や有機質資材からの無機態窒素溶出率を表示)

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(スマート農業技術の開発・実証プロジェクト)
  • 研究期間 : 2021~2022年度
  • 研究担当者 : 高田裕介、早野美智子、森下瑞貴、滝本貴弘、小林創平、望月賢太、古賀伸久、原嘉隆、前島勇治、桑形恒男
  • 発表論文等 :
    • 古賀ら(2019)土肥誌、90(2):107-115
    • 職務発明プログラム「被覆尿素肥料からの窒素溶出量の計算ツール」、機構-P10