飼料及び堆肥に残留する除草剤(クロピラリド)の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル(第3版)

要約

クロピラリドが原因と疑われる農作物の生育障害の発生防止策と、発生した場合の対処方法を記載した総合対策マニュアルである。行政機関を通じた公設試、農業生産団体等による堆肥生産者および堆肥利用者に対する指導に活用できる。

  • キーワード : クロピラリド、生育障害、堆肥、生物検定法、分析法
  • 担当 : 農業環境研究部門・化学物質リスク研究領域・有機化学物質グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

海外で牧草や穀類に使用されている除草剤クロピラリドが含まれた輸入飼料を家畜に給与すると、クロピラリドはふん尿中に排せつされる。そのふん尿を原料とした堆肥を土壌に施用すると、トマトやスイートピー等のクロピラリドに感受性の高い野菜や花きでは生育障害が発生する可能性がある。農研機構は2009年に「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」(以下「マニュアル」と略記)初版を、2020年にマニュアル(第2版)を公開している。マニュアル(第3版)では、農作物のクロピラリド耐性の新たな評価・再評価を行うとともに、残留分析により得た堆肥中クロピラリド濃度に応じた堆肥施用量の目安等について公開する。さらに、農作物のクロピラリド耐性の評価方法、堆肥中クロピラリド濃度に基づいた堆肥施用量の計算方法、および戻し堆肥利用に伴う堆肥中のクロピラリド蓄積の詳細を解説集としてマニュアルに付属して公開する。

成果の内容・特徴

  • 本マニュアルは、クロピラリドに関する諸性質、残留分析法、生物検定法、堆肥利用者のための対策マニュアル、および、堆肥生産者のための対策マニュアル、で構成される。
  • ケイトウやニンジンのクロピラリド耐性が極弱であることを見出すなど、10作物について新たに耐性を付し、1作物について耐性を変更した結果をマニュアルに示している(表1)。解説集には、農作物のクロピラリド耐性の評価方法(農作物の試験条件や土壌中クロピラリドの各濃度段階における生育障害の程度)について示している。
  • 残留分析により得た堆肥中クロピラリド濃度から作物のクロピラリド耐性に応じた堆肥施用量(最大値)を推定する式をマニュアルに示している(図1)。なお、都道府県の施肥基準等の順守のため、堆肥施用量の上限を3t/10aとしている(表2)。解説集には、堆肥施用量の算出に至る過程、すなわち、農作物において生育障害が発生しない土壌中濃度と、堆肥中クロピラリド濃度等の情報に基づく土壌中クロピラリド濃度分布の推定方法、およびそれらの比較による堆肥施用の可・不可判断方法等について示している。
  • 戻し堆肥利用に伴う堆肥中のクロピラリド蓄積を防止するため、オガ粉やモミガラ等の副資材併用をマニュアル中に示すとともに、その根拠となる戻し堆肥利用に伴う堆肥中のクロピラリド蓄積に関する予測式と実験に基づく検証結果を解説集に示している(図2)。
  • 本マニュアルは、農研機構ウェブサイト内からダウンロードできる。
    https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/niaes/manual/155027.html

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 農林水産省等の行政機関を通じた公設試、農業生産団体等による指導に活用。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国
  • その他 : 農林水産省7課長連名通知「牛等の排せつ物に由来する堆肥中のクロピラリドが原因と疑われる園芸作物等の生育障害の発生への対応について」(4消安第3785号等、令和4年10月24日最終改正)において本マニュアルの活用が示されている。

具体的データ

表1 農作物のクロピラリド耐性,図1 堆肥中クロピラリド濃度と作物の耐性(

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(レギュラトリーサイエンス研究委託事業:堆肥中のクロピラリドによる生育障害を防ぐための技術開発、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業)
  • 研究期間 : 2017~2020年度
  • 研究担当者 : 清家伸康、渡邉栄喜、並木小百合、阿部佳之、小島陽一郎、神谷裕子、樋口幹人、稲本勝彦、森川クラウジオ健治、福田武美(宮崎県総農試)、杉田浩一(宮崎県農業経営支援課)、郡司孝幸(前宮崎県総農試)、起汐一広(宮崎県児湯農林振興局)、永井浩幸(宮崎県総農試)、有簾隆男(宮崎県総農試)
  • 発表論文等 :