土壌中クロピラリドが野菜・花きの初期生育に及ぼす影響・データ集(第2版)

要約

野菜・花き(58品種)の初期生育時においてクロピラリドが及ぼす影響を濃度ごと、経時的に示すことで具体的な観察のポイントを解説するデータ集である。野菜・花きの栽培初期にクロピラリドによる影響があるか否かを確認する際の参考として活用できる。

  • キーワード : クロピラリド、初期生育、生育障害、土壌中濃度、堆肥
  • 担当 : 農業環境研究部門・化学物質リスク研究領域・有機化学物質グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

海外で牧草や穀類に使用されている除草剤クロピラリドが含まれた輸入飼料を家畜に給与すると、クロピラリドはふん尿中に排せつされる。そのふん尿を原料とした堆肥を土壌に施用するとトマトやスイートピー等のクロピラリドに感受性の高い野菜や花きでは生育障害が発生する可能性がある。農林水産省7課長連名通知「牛等の排泄物に由来する堆肥中のクロピラリドが原因と疑われる園芸作物等の生育障害の発生への対応について」(28消安第4228号等,4消安第3785号等最終改正)では、農作物においてクロピラリドの影響が疑われる際は速やかに都道府県に報告するように呼びかけており、早期にクロピラリドによる影響の有無を確認することが重要である。本データ集では、クロピラリドによる症状を葉の形状に着目して整理し、具体的な症状の判別におけるポイントを解説するとともに、初版には未収録の野菜17品種、花き15品種の画像集を追加する。

成果の内容・特徴

  • 市販培養土(くみあいニッピ園芸培土1号)に、土壌中濃度が低から高濃度(0、1、5、25 μg/kg-乾土)となるようにクロピラリドを添加した堆肥を混和(培養土:堆肥=99:1、1 t/10 a施用相当)し、ポットで野菜・花きを栽培した場合に、クロピラリドがこれらの作物の初期生育に及ぼす影響を濃度ごと、経時的に示している。
  • 影響データ集(第2版)第1章では、クロピラリドによる症状について葉の形状に着目して整理している(表1)。葉が萎縮する縮葉等の具体的な症状については、葉の形状ごとに判別におけるポイントを、画像を用いて解説している(図1)。また、縮葉や葉のカップ状の変形といった形態症状が現れるいくつかの病虫害および要素障害については、クロピラリドによる症状との違いや判別のポイントを示している(図2)。
  • 影響データ集(第2版)第2章の野菜編にはリョクトウ、シュンギク、結球レタス、リーフレタス、ズッキーニ、オクラ、セロリ、ニンジン等17品種、第3章の花き編にはペチュニア、ガーベラ、ダリア、ケイトウ等15品種の画像集を新たに追加し、総計58品種の野菜・花きの初期生育時にクロピラリドが及ぼす影響の画像を収録している(図3)。
  • 本影響データ集は農研機構ウェブサイト内からダウンロードできる。
    https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/155030.html

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 農林水産省等の行政機関を通じた公設試、農業生産団体等による指導に活用。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 全国
  • その他 : 症状の程度は品種・個体・栽培条件により変動する可能性がある。

具体的データ

表1 クロピラリドによる葉の形態症状一覧_野菜,図1 葉の形状に着目した症状の解説,図2 要素障害による葉のカップ状の変形とクロピラリドによる症状との差異の解説,図3 クロピラリドによる症状の画像集(ペチュニア「バカラ マジェンタ」の例)

その他

  • 予算区分 : 交付金、農林水産省(レギュラトリーサイエンス研究委託事業:堆肥中のクロピラリドによる生育障害を防ぐための技術開発、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業)
  • 研究期間 : 2017~2020年度
  • 研究担当者 : 並木小百合、稲本勝彦、福田武美(宮崎県総農試)、杉田浩一(宮崎県農業経営支援課)、郡司孝幸(前宮崎県総農試)、起汐一広(宮崎県児湯農林振興局)、永井浩幸(前宮崎県総農試)、有簾隆男(宮崎県総農試)、清家伸康
  • 発表論文等 :