河川上流域の農業的土地利用を算定するためのツール

要約

国土数値情報と農業統計情報から作成した流域・土地利用データベースを用い、河川上の任意地点から上流の農業的土地利用を算定するツールである。算定に用いるデータベースとツールは無償で利用できる。河川水質への農業活動の影響評価等の基礎資料として活用できる。

  • キーワード : 河川流域、農業的土地利用、国土数値情報、農業統計情報、オープンソース
  • 担当 : 農業環境研究部門・土壌環境管理研究領域・農業環境情報グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

河川水質は流域の自然環境や社会活動により大きく異なり、特に農業に関わる面積は国土の約12%を占め、河川の水質に影響を及ぼすことが懸念されている。わが国では国土数値情報で土地利用に関するデータが公開されているが、農業に関する土地利用は「田」と「その他の農用地」の2分類しか無いため、普通畑や果樹園といった地目や作目の影響を評価するのが困難である。そこで本研究では、河川上の任意の地点から上流域の流域面積や土地利用、特に農地の地目や作目といった農業的土地利用面積を簡便に算定するために必要な流域・土地利用データベースを構築するとともに、当該データベースを用いて河川上流域の農業的土地利用を算定するツールを開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 本ツールは、土地利用を算定するための流域・土地利用データベースと、データベースを基に任意地点から上流の農業的土地利用を算定するための土地利用算定ツールからなる。
  • 流域・土地利用データベースは、空間情報として国土数値情報を、統計情報として2014年耕地及び作付面積統計および2015年農林業センサス都道府県別統計書を使用している。
  • 農業的土地利用は、市町村毎に水稲作付率および地目・作目別割合に関するデータを整備し,その割合に応じて国土数値情報・土地利用細分メッシュの「その他の農用地」の面積を按分して算定している。
  • 流域・土地利用データベースおよび土地利用算定ツールは、プログラム開発サービスであるGitHubからダウンロードできる。土地利用算定ツールを起動すると、背景として地理院地図が、その上に単位流域界,河川流路およびその流下方向等が表示される(図1)。
  • ツールの地図画面で河川上の任意の地点をクリックすると、その地点より上流域がピンク色で選択される。画面右下には、選択した上流域の土地利用面積および流域に占める割合の算定結果が表示される(図2)。算定結果はCSVファイルとして保存できる。複数地点の位置情報を記載したCSVファイルをツールに読み込ませ、複数の上流域の土地利用をCSVファイルとして出力することもできる。

成果の活用面・留意点

  • 流域・土地利用データベースと、土地利用算定ツールは利用用途を問わず、無償で利用でき、河川水質への農業活動の影響評価等の基礎資料として活用できる。土地利用算定ツールの実行環境は、64bit版Windowsである。
  • 本ツールでは、国土数値情報の細分土地利用メッシュ1つの面積を1 haとして面積を計算する。作付面積等は統計情報を市町村単位で集計し、按分して求める。そのため,実際の作付面積と一致しないことに注意が必要である。
  • 流域・土地利用データベースのライセンスは国土数値情報の非商用である。土地利用算定ツールはオープンソースソフトウェアで、ライセンスはGNU General Public License v3.0である。

具体的データ

図1 土地利用算定ツールの初期画面,図2 土地利用算定ツールによる上流域選択および地目・作目別土地利用算定結果

その他

  • 予算区分 : 交付金、環境省(農薬水域生態リスクの新たな評価手法確立事業、農薬の水域生態リスク管理手法の確立業務)、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2013~2021年度
  • 研究担当者 : 岩﨑亘典、稲生圭哉、上田紘司(東京大学)
  • 発表論文等 :