要約
気候変動により西アフリカ半乾燥地域では強雨の頻度が増すと予測され、排水性が低い土壌では多雨年にササゲ収量が低下するとの予測である。干ばつは将来も大きな収量変動要因と予測されており、ササゲの生産においてこれまでの干ばつ対策に加え、過湿への対策も必要になる。
- キーワード : 気候変動、強雨と過湿、土壌、ササゲ、西アフリカ
- 担当 : 農業環境研究部門・気候変動適応策研究領域・作物影響評価・適応グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
サハラ砂漠の南に位置する西アフリカにはスーダン・サバンナと呼ばれる半乾燥地域(年間降水量600~1,000mm程度)が広がっている。この地域では乾燥に強いマメ科作物のササゲが広く栽培されているが、気候変動による強雨や干ばつなど極端気象の増加に伴い、将来の生産被害が懸念されている。このため、将来の気候変動に対応した育種や栽培技術開発のために、生産変動要因の特定が急務となっている。
成果の内容・特徴
- 本成果では、西アフリカを代表する土壌の種類であるリキシソル(LX)とプリンソソル(PT)(図1)の水分保持特性の差異を考慮し、干ばつと過湿によるササゲ収量低下の度合いをLX土壌とPT土壌のそれぞれについて示す。
- ササゲの生育期間(7月下旬~10月中旬)において、近年、西アフリカでは人間活動に起因する気候変動の影響により日降水量が30mm以上となる強雨の頻度が増加しており(図2左)、その傾向が今世紀半ばまで続く可能性が高い(図2右)。
- 土壌水分量と収量との関係を将来の気候変動予測に当てはめることで、現在(1990~2019年)および今世紀半ば(2020~2049年)の強雨と干ばつ発生時の収量を、LX土壌とPT土壌のそれぞれについて予測している(図3)。その結果、干ばつ発生時のササゲの収量低下は、土壌の種類によらず現在より軽減されることが示された一方、比較的排水性の低いLX土壌では、多雨年における過湿被害が現在よりも深刻化するとの予測結果を示している。
成果の活用面・留意点
- 西アフリカではこれまで主に干ばつ被害が注目されてきた。本成果は、西アフリカ半乾燥地域でも湿害対策の必要性を喚起するものである。
- ササゲ収量に対する将来の干ばつ被害は現在に比べて軽減するとの予測結果だが、LX土壌とPT土壌のいずれでも干ばつは将来も大きな収量変動要因である。品種開発や栽培技術の開発は干ばつと湿害の両方に対処する必要がある。
具体的データ

その他
- 予算区分 : その他外部資金(国際農研委託:畑作物の干ばつ応答を推定するための生育・収量予測モデルの高度化)
- 研究期間 : 2021~2023年度
- 研究担当者 : 飯泉仁之直、井関洸太朗(国際農研)、伊ヶ崎健大(国際農研)、酒井徹(国際農研)
- 発表論文等 : Iizumi T. et al. (2024) Agric. For. Meteorol. 344:109783