ドローン空撮画像の教師なし分類による土壌調査地点選定技術

要約

ドローン空撮画像に教師なし分類を適用することで圃場内土壌の相対的な区分図を作成することができる技術である。この土壌区分図を用いることで、土壌診断地点の選定における現場判断をサポートすることができる。

  • キーワード : 土壌診断、UAV、教師なし学習、地理情報システム、地力ムラ
  • 担当 : 農業環境研究部門・土壌環境管理研究領域・農業環境情報グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

農地における一般的な土壌診断では、圃場内の数カ所から採取した土壌を混合して分析する。しかし、実際の農地では土壌特性が空間的に不均質であり、試料採取地点の選択方法によっては土壌診断結果が圃場の生産性を的確に反映しない可能性がある。試料採取に起因する土壌診断結果の不確実性はデータに基づく土づくりの弊害となるため、調査者の技術や経験に依存せず誰もが同じ基準・方法で調査地点を選定することができる技術の開発が求められている。
そこで、本研究では空撮用ドローンの活用に着目し、土壌採取地点の選定根拠としての空撮画像の利用法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 本手法は、作物が生育していない状態でのドローン空撮、空撮画像に対する教師なし分類(k-means++法など)、分類結果のスムージング処理、出力された圃場内の土壌区分図に基づく試料採取地点の提案によって構成される(図1)。
  • 空撮によって取得する画像は、可視(RGB)画像、マルチスペクトル画像、熱赤外画像、DSM(Digital Surface Model)画像である。いずれも一般的に普及しているドローンの搭載センサおよび画像解析ソフトにより取得することができる。
  • 最終的に得られる圃場内の土壌区分図は、実際に採取した土壌試料の理化学性の分布傾向を反映している(図2)。この結果は、事前に空撮したドローン画像の教師なし分類結果が土壌試料採取地点の選定に対して有効であることを示す。
  • 調査者の技術や経験に依存しない「データに基づく土づくり」の実践に繋がる技術である。

成果の活用面・留意点

  • 本手法によって出力される土壌区分図(図2)に従って複数試料を採取し、混合することで一般的に行われている土壌診断のための試料とすることができる。出力される区域数は調査者の裁量で決定することができる。
  • 出力される土壌区分図は、観測された地表面の状態が教師なし分類によって相対的に区分されたものであるため、特定の土壌理化学性指標の分布を定量的に示すものではない。ただし、採取試料を混合せずに個別に分析をした場合は、得られた分析値を土壌区分図に当てはめることで簡易的な土壌特性の分布図とすることができる。
  • 圃場が過度に乾燥している場合や湿っている場合は、地表観測から土壌のムラを捕捉できない可能性が高くなるため、空撮の時間帯に留意する必要がある。また、圃場に影がかかってしまうと、土壌の違いではなく影の有無で地表面が区分されてしまう。そのため、圃場付近に建造物や木、電柱がある場合も空撮する時間帯に注意が必要である。
  • 使用する空撮画像は前述のものが揃っていなくても構わない。ただし、使用する画像の組み合わせが異なる場合は、同圃場・同時刻の空撮画像であっても出力される土壌区分図は異なる。

具体的データ

図1 土壌区分図の作成フロー,図2 出力された土壌区分図と土壌理化学性の関係

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2020~2023年度
  • 研究担当者 : 森下瑞貴、石塚直樹
  • 発表論文等 :
    • 森下、石塚(2023)土肥誌、94:254-262
    • 森下、石塚「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム」特開2023-140607(2023年10月5日)