要約
バイオ炭を主要生産物とする低速熱分解炭化方法を対象に、バイオマス輸送、前処理、炭化までのライフサイクルGHG排出量を既往文献から整理・集約したものである。炭化設備(開放式、密閉式)やバイオマス原料などの違いを考慮してバイオ炭製造に伴うGHG排出量を算出できる。
- キーワード : 温室効果ガス、バイオ炭、バイオマス、熱分解、GHG排出原単位
- 担当 : 農業環境研究部門・気候変動緩和策研究領域・緩和技術体系化グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
バイオ炭の農地施用によるGHG排出削減効果を評価する際には、土壌炭素貯留のほかに、製炭プロセス(バイオマス輸送、前処理、炭化、排熱利用によるGHG削減)からのGHG排出を考慮する必要がある。バイオ炭製造に伴うGHG排出量は、炭化方法や設備の規模、バイオマス原料、炭化時に生じる排熱利用の有無などの条件によって大きく異なる。農家自身が製炭する場合など、製造までの各プロセスにおける詳細な入出力データが明らかであれば、個々の実状に沿ったGHG排出量が算定可能である。一方、市販のバイオ炭を利用するなど詳細なデータが得られない場合には、平均的なGHG排出量(二次データ、すなわちバイオ炭製造のGHG排出原単位)を利用することになる。しかし、製炭条件を考慮したバイオ炭製造のGHG排出原単位は整備されていないのが現状である。そこで、本研究は炭化設備やバイオマス原料などの違いを考慮したバイオ炭製造のGHG排出原単位の推計を目的とする。バイオ炭を主要生産物とする低速熱分解炭化方法のライフサイクルアセスメント(LCA)に関する既存研究を調査し、製炭プロセスごとにGHG排出量を抽出したうえで、炭化設備(開放式と密閉式)とバイオマス原料(木質残渣、作物残渣、その他植物性廃棄物、スラッジ)の組合せ別に集計することによってGHG排出原単位を求める(図1)。
成果の内容・特徴
- バイオ炭製造のGHG排出原単位(ton-CO2e/ton-バイオ炭)には、バイオマスの輸送、前処理、炭化および排熱利用の各プロセスによる直接・間接GHG排出量が含まれる。文献調査により、18文献から計62セットのGHG排出量データを抽出し、これらを炭化設備、バイオマス原料、排熱利用の有無の組合せ別に整理して、計24のGHG排出原単位を算出している(表1)。
- 開放式の炭化設備ではメタンが排出されるため、排熱利用なしでのGHG排出原単位が約0.6となり、IPCC報告書におけるバイオ炭(開放式)製炭時GHG排出原単位のデフォルト値(0.8)に近い(図2左)。一方、密閉式・排熱利用なしではスラッジを除きGHG排出原単位(0.07-0.17)が相対的に小さい。さらに、炭化プロセスで発生する余剰排熱が有効利用される場合では、この熱量と同量のエネルギーを電力などで代替した場合に発生したであろうGHG排出量をシステム全体から差し引くことができる。この量は大規模な密閉式施設で特に大きく、システム全体としてGHG排出原単位は大きくマイナスとなる(図2)。このことから、炭化時に生じる排熱の有効利用がGHG削減において重要と示唆される。
バイオマス原料(密閉式)について、スラッジは前処理に要するエネルギーが大きく、かつ、排熱が少ないためにGHG排出原単位が最も大きい(図2右)。木質残渣と作物残渣では、炭化プロセスのGHG排出量はいずれも小さいが、排熱利用によるGHG削減効果は木質残渣で相対的に大きい。
成果の活用面・留意点
- 本原単位は低速熱分解で得られるバイオ炭を対象に、製炭条件の違いを考慮してバイオ炭製造に伴うGHG排出量の算定に適用できる。なお、エネルギー生産を主目的とするガス化等のプロセスで併産品として得られるバイオ炭には適用できない。
- 開放式の場合はバイオマス原料によってメタンの排出量の差が大きいため、メタン実測データの使用が望ましい。また、排熱利用によるGHG削減効果は、炭化時に生じる排熱量のほか、想定される代替製品(電力、熱など)の選択にも影響されるため、不確実性が大きい。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、経済産業省(グリーンイノベーション基金事業)
- 研究期間 : 2023~2024年度
- 研究担当者 : 湯龍龍、GAJASINGHE KAVINDI、佐々木勇麻
- 発表論文等 : G.A.G. Kavindi et al. (2024) Resources, Conservation & Recycling
doi:10.1016/j.resconrec.2024.107900