要約
作物の生育・収量予測システムを構築する場合、過去の収量などの予測精度の評価が必要である。気象庁が提供する気象の実績値と過去の予報値を一つの時系列になるよう組み合わせた接合データを12年間(2010-2021年)について作成し、世界のいずれの地域・月でも収量などの予測精度の評価を可能にする。
- キーワード : 生育予測、収量予測
- 担当 : 農業環境研究部門・気候変動適応策研究領域・作物影響評価・適応グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
食料のサプライチェーンのグローバル化と気候変動に伴う極端気象の増加により、作物の生育と収量を世界規模で予測することの重要性が増してきている。作物の生育・収量予測では、予測システムの実運用を開始する前に収量などの予測精度を評価する必要がある。この精度評価には一般には過去の気象予報値が用いられる。この際、気象の実績値と過去の予報値を一つの時系列になるよう組み合わせたうえで予測システムに入力する必要があるが、気象の予報値は月別に将来8か月間について作成され、さらに実績値に対する系統的な予報誤差を補正しなくてはならないため、作業が煩雑だった。
そこで、本研究では、世界のいずれの地域・月でも生育・収量予測の精度評価を可能にするため、気象の実績値と予報値を予め組み合わせた、接合データと呼ばれるデータセットを全世界について作成する。接合データの期間は直近の12年間(2010-2021年)とする。
成果の内容・特徴
- 本データセットは気象の実績値と予報値、ベースライン気候値を組み合わせた日別データである。接合日の前日までは実績値、接合日から最大241日間は予報値、それ以降はベースライン気候値となる(図1)。異なる予報値が5種類(メンバーと呼ばれる)含まれており、予報の不確実性を表す。実績値には気象庁のJRA-55再解析値、予報値には気象庁気象研究所のCPS2予報システムの出力をそれぞれ使用した。JRA-55再解析値とCPS2予報値はそれぞれ系統的な誤差を除去した後、ベースライン気候値に接合した。
- 本データセットは全世界を対象とする。これにより、世界のいずれの地域でも生育・収量予測の精度評価が可能である。空間解像度は0.5°であり、これは55kmメッシュに相当する。
- 本データセットには10種類の気象要素が含まれており(表1)、生育・収量予測をはじめとして農業分野での広範な応用が可能である。
- 本データセットには13の接合日が含まれる(表2)。これにより、いずれの月でも生育・収量予測の精度評価が可能である。
- 任意の地点での収量予測を想定した場合、接合データの予報値部分の誤差(対:実績値)は播種時点で大きいが、接合日が収穫に近づくにしたがって相対的に小さくなる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本データセットは、全世界を対象とする収穫前の収量予測システムなどの予測精度を評価する際の基盤データになると期待される。データセットはデータ統合・解析システムから入手できる。
- 生育・収量予測を行う場合は、接合日が予測日になるように本データセットを使用する。例えば、接合日が3月1日であれば、3月1日時点での予測の精度を評価できる。
- 接合日の間隔は概ね30日間だが、毎月15日といった固定日にはなっていない。後継のデータセットを将来、開発する場合には、より使いやすい接合日を設定する。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2019~2024年度
- 研究担当者 : 飯泉仁之直、滝本貴弘、丸山篤志、金元植、眞﨑良光、萱場亙起(気象庁)、高谷祐平(気象研)、増冨祐司(国環研)
- 発表論文等 :
- Iizumi T. et al. (2024) Sci. Data, 11:849
- 農研機構(2023)職務作成プログラム「気象の再解析値と予報値をバイアス補正して組み合わせた接合データを生成するプログラム」、機構-X31
- 飯泉仁之直(2022)「JRA55-JMACPS2-Delta-S14FD reanalysis-forecast combined meteorological forecing dataset」 https://doi.org/10.20783/DIAS.649(2022年10月26日)