汚泥肥料、菌体りん酸肥料の肥効を見える化するアプリ(畑版)の開発および公開

要約

ウェブ上で、任意のほ場を地図上で選択し、肥料の種別(汚泥コンポスト、乾燥汚泥等)、施用量、施用日、収穫予定日を入力すると、栽培期間中の窒素、リン酸、カリウムの肥効試算値が提示される。畑地における汚泥肥料等の施肥設計に活用できる。

  • キーワード : 汚泥肥料、菌体りん酸肥料、汚泥、肥効予測、日本土壌インベントリー
  • 担当 : 農業環境研究部門・土壌環境管理研究領域・土壌資源・管理グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 普及成果情報

背景・ねらい

肥料原料は多くを海外に依存し、国際市況や原料産出国の輸出に係る動向の影響を強く受けている。肥料を生産現場に安定的に供給していくために、こうした外的要因に左右されない生産体制の構築が不可欠であり、その中で、堆肥や下水汚泥資源等の国内資源の活用が改めて注目されている。農研機構は2021年に堆肥等の有機質資材の窒素肥効を予測するウェブアプリを公開し、さらに、2025年にはリン酸、カリウムの肥効計算機能を追加してきた。しかし、下水汚泥等に由来する肥料である汚泥肥料や、2023年に公定規格が新設された菌体りん酸肥料の肥効試算には未対応であった。そこで、全国から汚泥を原料とする肥料等を収集し養分含量を解析して、畑地を対象とした汚泥肥料等の肥効を見える化できるウェブアプリを開発し、公開する。

成果の内容・特徴

  • 本アプリにおける肥効試算までの操作手順は、以下の4ステップである。①地図上でほ場(畑)の場所を選択、②肥料の種別を選択(汚泥コンポスト、乾燥汚泥等)、③施肥量を入力、④肥料の施用時期を設定(図1)。
  • 本アプリは農研機構「日本土壌インベントリー(https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/)」の地図上で指定した任意のほ場の土壌の種類および気象条件を読み込み、窒素肥効に影響する「地温」を推定する。
  • 本アプリでは、2023~2025年に全国から収集した肥料73点の成分含量をもとに、これら肥料を製造方法別に汚泥コンポスト、乾燥汚泥、脱水汚泥等に分け、それら種別ごとの平均的な窒素、リン酸、カリウムの成分含量のデータが保存されている。これにより、肥料の種別選択だけで、肥効試算結果を得ることができる。
  • 肥料成分含量値はアプリ利用者が自由に書き換えることが可能であり、個別肥料の実測値に基づく肥効の精密試算も可能である。
  • 試算により汚泥肥料、菌体りん酸肥料からの養分供給量がわかるので、化学肥料の減肥可能量が把握できる(図2)。
  • 本アプリは「日本土壌インベントリー」の「土壌管理アプリ集」から無料で利用できる。
  • 本アプリは農業関連の他ソフトウェアと連携できるように、農研機構の農業データ連携基盤「WAGRI」でアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)としても公開する。

普及のための参考情報

  • 普及対象 : 畑作物・野菜生産者、農業技術指導関係者、汚泥肥料生産事業者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 汚泥肥料製造施設50カ所。
  • その他 : 水田での窒素肥効試算には未対応である。溶脱等による窒素・加里の肥効低下を回避するため、施用から栽培開始までの期間を可能な限り短くする。また、本アプリでのリン酸肥効は、栽培実証に基づくものではなく、肥料分析の公定法のひとつである「く溶性リン酸」を基準に、その成分が化学肥料と同等に作物に吸収されると仮定した計算値である。

具体的データ

図1 肥効試算までの操作手順1~4(アプリ操作画面から一部抜粋),図2 肥効試算の結果の表示例

その他

  • 予算区分 : 農林水産省(戦略的スマート農業技術等の開発・改良、ペレット堆肥流通・下水汚泥資源等の肥料利用促進技術の開発・実証)
  • 研究期間 : 2023~2025年度
  • 研究担当者 : 井原啓貴、藤田睦、中村真人、折立文子、宮本豊尚(土木研究所)、髙橋啓太(土木研究所)、日高平(京大)
  • 発表論文等 : 農研機構(2026)「汚泥肥料、菌体りん酸肥料の肥効見える化アプリ活用マニュアル」
    https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/niaes/manual/174701.html (2026年3月2日)