要約
黒ボク土水田(全国33万ha)を対象に、日本独自に改良した水田用と黒ボク土用の改良RothCモデルを統合して、黒ボク土水田用改良RothCモデルを開発し、土壌炭素貯留量の変動予測精度を大幅に向上させる。本モデルは普及に向け「土壌のCO2吸収「見える化」サイト」に実装する。
- キーワード : 土壌炭素、炭素貯留、RothCモデル、黒ボク土水田、地球温暖化対策
- 担当 : 農業環境研究部門・土壌環境管理研究領域・土壌資源・管理グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 普及成果情報
背景・ねらい
農地に炭素を長く留めることは地球温暖化対策の鍵であり、持続可能な農業の実現に直結する。農地管理による土壌炭素貯留への期待が高まる中、わが国では、英国で開発された土壌炭素動態モデル「RothCモデル」を日本の農地向けに改良した水田用改良RothCモデル、黒ボク土用改良RothCモデルを用いて、土壌炭素量の変化を高精度に推定し、大気中CO2吸収量の評価に活用している。しかし、わが国の水田面積の約13%を占める黒ボク土水田では、従来の予測値が実測値より過小評価される課題があった。そこで、従来の改良RothCモデルにさらなる改良を加え、全国に約33万ヘクタール広がる黒ボク土水田を対象とした「黒ボク土水田用改良RothCモデル」を適用することで、土壌炭素量の長期予測精度を大幅に向上させる。この改良により、有機物施用や管理方法の違いが炭素貯留に与える効果をより正確に評価でき、炭素貯留効果を定量的に示すための信頼性の高い基盤情報となる。
成果の内容・特徴
- 黒ボク土水田用改良RothCモデルでは、日本独自に改良した水田用改良RothCモデルと黒ボク土用改良RothCモデルを統合し、湛水時は2割、非湛水時は6割に分解率を低減したうえで、「腐植」コンパートメントの分解率をリン酸吸収係数(PAC)に応じて遅くなるように係数(H(f)=1.140×e0.0006832×PAC)で割り、不活性有機物はゼロに設定することで、黒ボク土水田における炭素動態をより正確に再現している(図1)。
- 全国5か所の黒ボク土水田で本モデルの精度を検証した結果、予測精度は従来の水田用改良RothCモデルに比べて約50%向上する(表1、図2)。
- 本モデルは、従来の改良RothCモデルとともに、農研機構Webサイト「土壌のCO2吸収「見える化」サイト(https://soilco2.rad.naro.go.jp/)」に実装し、誰でも簡単に、かつ高精度で土壌のCO2吸収量を"見える化"できる。
普及のための参考情報
- 普及対象 : 全国の農業者、普及組織、行政機関、民間企業、教育機関。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 : 日本全国の農地(黒ボク土水田)に適用可能。
- その他 : 本モデルと従来の改良RothCモデルを組み合わせてWAGRI‐APIとして公開し、民間企業の営農管理システムでも利用できる。さらに、現在、日本国温室効果ガスインベントリ報告において従来の改良RothCモデルが使用されているが、本成果を用いることで、インベントリ報告の精度向上にも役だてることが可能である。
具体的データ

その他