要約
籾殻バイオ炭の密閉式製造を対象に炭化温度と主なバイオ炭機能との関係を調べ、炭化温度別にCO2削減量(炭素固定量、余剰エネルギー利用由来のCO2削減量)を推計した結果、バイオ炭機能とCO2削減量の両面から見ると、これまで適切とされてきた中温域よりも高温域の方がより適切である。
- キーワード : 籾殻、バイオ炭、バイオ炭機能、炭化温度、CO2削減効果
- 担当 : 農業環境研究部門・気候変動緩和策研究領域・緩和技術体系化グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
農業分野でのバイオ炭利用は、その機能と炭素固定による気候変動緩和効果の両面から注目されている。炭化温度とバイオ炭機能の関係を調べる文献によれば、高温域(600-800°C、IPCC定義)での製炭でpHは上がり、その他の有益な機能は高まる。一方、炭化温度が高くなると、バイオマス中の炭素に対する生成されるバイオ炭中の炭素の比率(以降、炭素リカバリーとする)が下がるため、中温域(450-600°C)が適切とされている。しかし、バイオ炭による炭素固定量は、炭素リカバリーだけでなく、それに100年後の炭素残存率をかけて評価する必要がある。また、高温域では製炭時に得られる余剰エネルギーが増え、有効利用によるCO2削減効果も高まると考えられる。そこで、本研究は籾殻バイオ炭の密閉式製造を対象とする既往文献を収集し、文献間で共通する5つのバイオ炭機能と炭化温度の関係を調べる(図1)。さらに、炭素固定量と余剰エネルギー利用に由来するCO2削減量を炭化温度(350-800°C、50°C間隔)別に推計し、バイオ炭機能とCO2削減効果の両面から見た適切な炭化温度帯を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 文献調査で得られた炭化温度とその時のバイオ炭機能値の関係をフィッティングした結果、炭化温度が上がるとpHが増加(有益でない)、陽イオン交換容量(CEC)が横ばい、その他の有益な機能(BET比表面積、全細孔容積、灰分含有率)が増加する。
- 炭素固定量は2019年改良IPCCガイドラインの算定方法に従い、バイオ炭収率、バイオ炭の有機炭素率と100年後の炭素残存率を用いて炭化温度別に算定する。100年後の炭素残存率は炭化温度と炭素残存率の関係を規定する既存の関数式を基に算定し、バイオ炭収率(図2)と有機炭素率は調査した文献データを基に炭化温度別に推計する。その結果、炭化温度が高まるとバイオ炭収率は低下するが、バイオ炭の有機炭素率がやや増加し、100年後の炭素残存率も増加するため、炭素固定量が増加すると算定される(図3)。一方、既存研究が採用する炭素リカバリーはバイオ炭収率と有機炭素率の積に相当するため、高温域で逆に低下する。気候変動緩和効果の観点では、炭素固定量の変化を採用すべきと言える。
- 高温域でバイオ炭の収率が低下するが、可燃性ガスやバイオオイルの増加によって余剰の高位発熱量が増える。さらに、その高位発熱量を電力に変え、グリッド電力を代替した場合の潜在的なCO2削減量も推計される(発電容量 : 100kW、300kW、電力使用地域 : 欧州、アジア)。
- これまでは、バイオ炭機能(一部)と炭素リカバリーの関係を基に中温域が適切とされてきたが、炭素固定量および潜在的なCO2削減量との関係に基づくと、高温域での製炭が両側面から見てより適切である(図4)。
成果の活用面・留意点
- 本研究で考慮したバイオ炭機能は、収集した文献が共通に考慮していた主要機能に限定している。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金、経済産業省(グリーンイノベーション基金事業)
- 研究期間 : 2024~2025年度
- 研究担当者 : 湯龍龍、GAJASINGHE KAVINDI、佐々木勇麻、岸本文紅、稲富素子
- 発表論文等 : Kavindi G.A.G. et al. (2025) Environ. Technol. Innovation
doi.org/10.1016/j.eti.2025.104657