機械学習によるダイズ青立ち・裂皮粒の発生量の予測モデル

要約

本成果は、ダイズ育成試験地の栽培試験データと気温・土壌水分データから、青立ち・裂皮粒の発生量(スコア)を予測する機械学習モデルを構築したものである。モデル解析により、開花後の特定時期の高温が障害発生リスクに関係することを示している。

  • キーワード : ダイズ、青立ち、裂皮粒、機械学習、気候変動
  • 担当 : 農業環境研究部門・気候変動適応策研究領域・気象・作物モデルグループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

近年、気候変動に伴う高温や干ばつ等の影響により、収穫期に茎葉が緑色のまま残る「青立ち」や、種皮が裂ける「裂皮粒」といったダイズの生育障害が各地で問題となっている。これらの障害は、気温や土壌水分、播種時期、品種特性などの複数の要因が重なって発生すると考えられるが、全国的な傾向や「いつ・どのような条件で起こりやすいか」は十分に整理されていない。
本研究では、全国のダイズ育成試験地の圃場で蓄積された栽培試験データと気象・土壌水分データを用い、機械学習により青立ち・裂皮粒の発生程度を予測するモデルを構築し、障害が起きやすい時期や環境条件を明らかにすることをねらいとする。

成果の内容・特徴

  • 農研機構の4育成試験地の試験圃場(秋田県大仙市、茨城県つくばみらい市、香川県善通寺市、熊本県合志市)で2008~2023年に得られた約500事例の栽培試験データを用い、ランダムフォレスト回帰により、青立ち・裂皮粒のスコア(0~5の連続値で、数値が大きいほど障害が重い)を目的変数とした予測モデルを構築している。説明変数には、品種名に加え、開花9日前から開花後60日までを10日ごとに区切った7期間の平均気温と推定土壌水分(FAO56モデルによる予測値)を用いている。データの約3分の2を学習、残りを検証に用いることで、青立ち・裂皮粒ともに、決定係数や相対誤差の指標から一定の精度でスコアを予測できることを示している(図1)。
  • 変数重要度(図2)と部分依存プロット(図3)を用いて、モデルがどの要因を重視しているかを解析している。その結果、青立ちについては主に開花後51~60日目、裂皮粒については主に開花後21~30日目の10日間の平均気温が重要であり、これらの時期に気温が高いほどスコアが高くなる傾向が示されている。また、一部の時期の土壌水分や品種(例 :「エンレイ」)が判断材料として相対的に大きく扱われていることも示されており、複数要因が組み合わさって障害リスクが変化することを示している。
  • 全国4育成試験地のヒストリカルデータを用いて、青立ち・裂皮粒について「開花後のどの時期の高温がどの程度リスクを高めるか」を定量的に示した点に、本モデルの特徴がある。

成果の活用面・留意点

  • 本成果で構築した機械学習モデルは,気象予測や将来気候シナリオから得られる気温・土壌水分を入力することで、栽培前の段階から青立ち・裂皮粒の発生リスクを事前評価することに活用できる。これにより、開花後の高温リスクを踏まえた播種時期の調整や晩生品種の選択など、気候変動下での栽培条件の検討・見直しを支援することが期待される。
  • モデルは4地点・5品種の試験データにもとづいて構築されているため、対象外の地域や品種に適用する場合には、追加データによる検証や再学習が望ましい。
  • 本モデルは気温・土壌水分・品種のみを対象としており、病害虫などのその他の要因は考慮していない。そのため、現場での利用時には、地域の栽培指針や防除指針などとあわせて活用する必要がある。

具体的データ

図1 青立ちスコアおよび裂皮粒スコアの予測値と実測値の関係,図2 青立ちスコア・裂皮粒スコアに対する品種および気温・土壌水分の変数重要度,図3 開花後の特定時期の平均気温と青立ちスコア・裂皮粒スコアの関係

その他

  • 予算区分 : 交付金、環境省(環境研究総合推進費)
  • 研究期間 : 2008~2025年度
  • 研究担当者 : 熊谷悦史、滝本貴弘、菱沼亜衣、髙田吉丈、大木信彦、山崎諒
  • 発表論文等 : Kumagai, E. et al. (2025) Eur. J. Agron. 170:127770