国内で流行している牛ウイルス性下痢ウイルスは、遺伝子型1bおよび2aが主流である
要約
国内には遺伝子型1bおよび2aに分類される牛ウイルス性下痢ウイルスが広く浸潤しており、2014年以降、主要な遺伝子型に変化はない。本研究で得られた知見は、適切なワクチン選択において有用な情報を提供する。
- キーワード:BVDV、遺伝子型、分子系統樹、5'非翻訳領域、E2遺伝子
- 担当:動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・ウイルスグループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)はフラビウイルス科ペスチウイルス属に分類されるウイルスで、牛に発熱や下痢、呼吸器症状、繁殖障害などを引き起こす。BVDVが妊娠牛に感染した際、特定の条件が揃うと子宮内感染によって持続感染(PI)牛が産出され、大量のウイルスを排出して主要な感染源となる。したがってワクチンによる予防が重要となるが、BVDVは遺伝子型によって抗原性が異なるため、適切なワクチン選択には流行株の遺伝子型情報を定期的にアップデートする必要がある。しかし、2014年以降、日本国内におけるBVDV流行株の遺伝子型情報は報告されていない。
本研究では2014~2020年に農場で採取された909検体のBVDV感染材料を収集し、5'非翻訳領域の塩基配列に基づく遺伝子型別を行うことで、適切なワクチン選択に有用な知見を得る。
成果の内容・特徴
- 遺伝子型別では、全国で分離された909検体のうち35検体(4%)が1a亜型、588検体(64%)が1b亜型、34検体(4%)が1c亜型、252検体(28%)が2a亜型であり、近年の流行株は2006~2014年の疫学調査報告と同様に遺伝子型1bおよび2aが主流である(図1,表1)。
成果の活用面・留意点
- 近年国内で流行しているBVDVは遺伝子型1bおよび2aが主流であるため、ワクチン使用の際は両方の遺伝子型を含む製品を選択することが望ましい。
- 現行のBVDVワクチンは子宮内感染を完全に防ぐことができないため、ワクチン接種のみでBVDVを制御することは難しく、抗原検査によるPI牛の摘発淘汰も併せて実施する必要があることに留意しなくてはならない。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2017~2021年度
- 研究担当者:西森朝美、安藤清彦、迫田義博(北大)、磯田典和(北大)、廣瀬静香(北大)、荻野紗帆(北大)
- 発表論文等:Nishimori A. et al. (2022) J. Vet. Med. Sci. 84(2):228-232