豚丹毒菌血清型1a型菌と2型菌を正確に区別する新規PCR法
要約
豚の届出伝染病である豚丹毒の疫学解析には正確な血清型判別が重要である。新規に開発したPCR法では稀に急性型豚丹毒罹患豚より分離される2型菌と1a型菌の区別が可能となり、病性鑑定施設での診断精度の向上が期待される。
- キーワード:豚丹毒菌、血清型1a型、2型、PCR、ERH_1440
- 担当:動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・細菌グループ
- 代表連絡先:
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
届出伝染病の一つである豚丹毒の臨床症状は、急性の敗血症型、亜急性の関節炎型、慢性の心内膜炎型に大別される。通常、急性型罹患豚からは血清型1型菌が、慢性型罹患豚からは2型菌が分離されるため、本菌の血清型を判別することは疫学的に重要である。これまで、豚や野生動物に病気を引き起こす主要な血清型(1a、1b、2、5型)を容易に型別できるマルチプレックスPCR法が開発されている。この方法では血清型1a型菌の検出にERH_1440遺伝子配列を利用したプライマーを用いているが、この方法でPCR検査を実施すると、急性豚丹毒罹患豚より分離される2型菌は、1a型菌と2型菌に特異的なバンドが同時に増幅されてしまうため1a型菌と区別できない。そこで本研究では、これらの2型菌と1a型菌を容易に区別できる新たなPCR法を開発する。
成果の内容・特徴
- これまでに同定している血清型を規定する遺伝子群の中から、ERH_1440遺伝子上流のERH_1442遺伝子と2型菌が保有しない遺伝子ERH_1446上に新たなプライマーを設計する(図1)。
- 新たに設計したプライマー1442Fおよび1446Rを用いて主要血清型菌についてPCRを行うと、1a型菌のみで特異的なバンドが増幅される(図2)。
- 種々の宿主より分離された豚丹毒菌および近縁のErysipelothrix属菌、計430株について、1442Fおよび1446Rプライマーセットを用いてPCRを行うと、1a型菌でのみ特異バンドが増幅される(表1)。
成果の活用面・留意点
- 今回、新たに開発したPCR法を用いることで血清型1a型菌とERH_1440を保有する2型菌の判別が可能になる。
具体的データ

その他
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2019~2021年度
- 研究担当者:西川明芳、白岩和真、下地善弘
- 発表論文等:
- Nishikawa S. et al. (2021)J. Vet. Med. Sci. 印刷中
- Shiraiwa K. et al. (2020) J. Vet. Med. Sci. 82:1376-1378.