感染個体と不活化ワクチン接種個体を識別できる新規サルモネラ症血清学的検査法

要約

サルモネラタンパク質SsaKおよびBamAを固相化抗原としたエライザ法による新規サルモネラ症検査法を用いることで、自然感染した個体と不活化ワクチンを接種した個体とを、産生される抗体の違いに基づき識別できる。本検査法は家畜・家きんのサルモネラ症清浄化に寄与できる。

  • キーワード:家畜・家きんのサルモネラ症新規検査法、エライザ法、抗サルモネラ抗体
  • 担当:動物衛生研究部門・動物感染症研究領域・細菌グループ
  • 代表連絡先:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

家畜・家きんのサルモネラ症は日本を含め、先進国、開発途上国を問わず発生している。畜産物を介しヒトに伝播したサルモネラは食中毒の原因になり得ること、また、畜産業においてはサルモネラ症の発生により極めて大きな経済的損失が生じることから、サルモネラ症予防対策の一環として、日本国内ではニワトリ・牛に対する不活化ワクチンの接種、そしてスクリーニング検査によるサルモネラ汚染評価が実施されている。スクリーニング検査の一手段として、畜産現場では動物血液中のサルモネラ抗体を測る血清学的検査を利用している。しかしながら、サルモネラ菌体表面に存在するリポ多糖(LPS)を抗原とした従来の検査法では、自然感染個体と不活化ワクチンを接種した個体とを識別出来ないことがあり、特に、監視伝染病に指定される家きんのサルモネラ症であるひな白痢において、不活化ワクチン接種個体の偽陽性による労力の増加が問題視されている。本研究では、自然感染した個体と不活化ワクチンを接種した個体とを産生される抗体の違いに基づき識別するために、エライザ用固相化抗原をサルモネラタンパク質の中より同定し、より適切に家畜・家きんのサルモネラ症を診断できる新規検査法を確立することを目的としている。

成果の内容・特徴

  • サルモネラタンパク質SsaKおよびBamAを固相化抗原として用いたエライザ法は、実験感染ニワトリと不活化ワクチンを接種したニワトリとを識別できる(図) 。
  • 大腸菌を用いた組換えタンパク質精製手法を応用することで、SsaK及びBamAは大量かつ比較的安価に精製できる。

成果の活用面・留意点

  • 固相化抗原に用いたサルモネラタンパク質SsaKおよびBamAはサルモネラ属菌における保存性が高く、本検査法は様々な血清型のサルモネラに対しても応用できる可能性がある。
  • 本検査法は偽陽性率の低い血清学的検査法として、ひな白痢を含め家きんのサルモネラ症、ならびに牛や豚といった家きん以外の家畜のサルモネラ症の検査に応用できる。
  • 不活化ワクチン接種後にサルモネラに感染した個体と不活化ワクチン接種後非感染のままの個体についても、両者を識別できるか検証する必要がある。
  • 実験感染検体だけではなく、実際の臨床検体を用いて検証する必要がある。

具体的データ

図 ニワトリ血清を用いたエライザ法に基づくサルモネラ新規検査法の検証実験(各血清は200倍希釈したものを使用)

その他

  • 予算区分:交付金、文部科学省(科研費 20K06422)
  • 研究期間:2019~2021年度
  • 研究担当者:中山ももこ、Aribam Swarmistha Devi、市村鋭(岩手県)、徳山京里(石川県)、白岩和真、小川洋介、下地善弘、江口正浩
  • 発表論文等:
    • 中山ら、特願(2021年10月21日)
    • 中山ら、特願 (2021年10月21日)