要約
アフリカ豚熱ウイルス粒子を構成するタンパク質p11.5はアフリカ豚熱特異的な抗体を誘導し、間接ELISA法による血清診断において適切な標的抗原となる。p11.5を抗原とするELISA法はアフリカ豚熱の診断や清浄性の確認、ワクチンの効果等判定を通じて本病の防疫に貢献する。
- キーワード : アフリカ豚熱ウイルス、ELISA法、抗体価測定法、豚
- 担当 : 動物衛生研究部門・越境性家畜感染症研究領域・海外病グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
アフリカ豚熱ウイルス(ASFV)は豚やいのししに感染し、通常、甚急性ないしは急性の経過を経て感染後7日程でほぼすべての感染個体を死に至しめる強毒なウイルスである。一方、現在、国内外で開発が進められているワクチンの候補株や野外の弱毒株への暴露では、宿主動物は死に至ることなく、比較的長期間体内にウイルスを保持するためウイルスに対する免疫が惹起され、循環血中にASFVに対する抗体が現れる。循環血中の抗体の存在やその消長はASFVへの暴露の有無や免疫能の持続状態を検知する上で極めて鋭敏なマーカーとなる。そこで本課題では、将来のワクチン開発を想定し、非強毒型ASFVに対する豚およびいのししの抗体応答のモニタリングに適すると考えられるアフリカ豚熱由来のタンパク質p11.5を標的抗原とした血清ELISA法を構築する。
成果の内容・特徴
- 本ELISA法はASFV由来のp11.5タンパク質を固相化抗原とする間接ELISAである(図1)。
- 本ELISA法は既存の市販ASFV ELISA法と比べ、十分に高い相対感度・特異度を示す(図2)。
- 本ELISA法は既存の市販ASFV ELISAと比べ、より感染早期から血清中の抗ASFV抗体の検出を可能にする(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本ELISA法は、ASFVの診断や清浄性の確認、ワクチン実用時の接種動物における免疫状況のモニタリング等に有用である。国産初の血清診断法として実用化が期待できる。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 農林水産省(包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業:官民・国際連携によるASFワクチン開発の加速化)
- 研究期間 : 2020~2023年度
- 研究担当者 : 國保健浩、渡邉瑞季(日生研)、北村知也、永田宏次(東大)、生澤充隆、亀山健一郎、舛甚賢太郎
- 発表論文等 :
Watanabe M. et al. (2023) Pathogens. 12(6): 774. doi: 10.3390/pathogens12060774