要約
スズメが近年アジア諸国で流行する強毒型ニューカッスル病ウイルスに感染すると、脳炎や下痢を伴う斃死やウイルス排泄が生じる場合がある。本研究の結果は、養鶏施設における野鳥対策が家禽の感染症の発生リスクの低減に有効であることを支持する。
- キーワード : スズメ、野鳥、ニューカッスル病
- 担当 : 動物衛生研究部門・衛生管理研究領域・病理・生産病グループ
- 代表連絡先 :
- 分類 : 研究成果情報
背景・ねらい
近年、家禽の様々なウイルス感染症の伝播における野鳥の役割が注目されている。特にスズメなどの鶏舎に侵入しやすい鳥種が重要なウイルス感染症に罹患した際の感染病態やウイルス媒介リスクの検証が必要となっている。
ニューカッスル病は高病原性鳥インフルエンザと同様に家禽に高死亡率をもたらす重要疾病である。これまでに、野鳥を対象として、近年アジア諸国で流行する強毒型ニューカッスル病ウイルス(genotype VII)感染時の病態を実験的に検証した研究は見当たらない。
本研究は、国内で捕獲されたスズメに強毒型ニューカッスル病ウイルス(genotype VII)を実験的に経鼻接種する感染実験を世界で初めて実施し、感染病態の解析を行うことを目的とする。
成果の内容・特徴
- スズメへの強毒型ニューカッスル病ウイルス(genotype VII)経鼻接種により感染が成立する。接種ウイルス量を多くすると死亡率やHI抗体検出率が上昇する(表1)。
- 感染スズメの病態には個体差があり、主要な症状は神経症状や下痢を伴う斃死であるが、症状を示さない個体(不顕性感染)もみられる(図1)。
- ウイルスはスズメの脳で増殖しやすく、ウイルス性封入体を伴う脳炎が生じる(図1)。
- 一部の斃死スズメの口腔スワブや脳からウイルスが分離される(表1)。一方、肝臓や肺、腸管などからはウイルスは分離されない。
成果の活用面・留意点
- スズメは近年アジア諸国で流行する強毒型ニューカッスル病ウイルス(genotype VII)に感受性を有しており、神経症状や脳炎が特徴的な所見である。
- 感染スズメの口腔から排泄されるウイルスや斃死体はウイルス感染源となる可能性があるため、スズメによるウイルス伝播リスクの検証が引き続き必要である。
- 養鶏施設において野鳥対策を徹底することは、強毒型ニューカッスル病ウイルスを含む家禽のウイルス感染症の発生リスクの低減に効果的である。
具体的データ

その他
- 予算区分 : 交付金
- 研究期間 : 2017~2022年度
- 研究担当者 : 山本佑、石原未希(富山県)、黒川葵、真瀬昌司
- 発表論文等 : Yamamoto Y. et al. (2023) Avian Dis. 67:57-64