新規乳酸菌株が鶏腸管内からカンピロバクターを低減する

要約

乳酸菌(Limosilactobacillus ingluviei C37 strain;LIC37)は、鶏への経口投与で腸管内のカンピロバクター菌数を低減する。本研究を進展させることで、鶏腸管内のカンピロバクターを低減するプロバイオティクスの開発が期待できる。

  • キーワード : カンピロバクター、乳酸菌、プロバイオティクス、鶏
  • 担当 : 動物衛生研究部門・人獣共通感染症研究領域・腸管病原菌グループ
  • 代表連絡先 :
  • 分類 : 研究成果情報

背景・ねらい

Campylobacter jejuniによって引き起こされるカンピロバクター食中毒は、わが国で発生している細菌性食中毒の中で発生件数が最も多く、主な原因食品は鶏肉である。農場の鶏は高い確率でC. jejuniを腸管内に保有しており、その低減に資する農場で利用可能な対策資材の実用化が求められている。海外では、生産コストが低く効果の持続性が高いと考えられているプロバイオティクスの活用が研究されている。そこで本研究では、鶏腸管内のカンピロバクターを低減する新たなプロバイオティクス候補となりうる乳酸菌を同定することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • Limosilactobacillus ingluviei C37 strain(LIC37)は、タイ王国で飼育されたブロイラーの腸内細菌叢ライブラリーから発見した抗炎症性作用を有する乳酸菌である。
  • LIC37の投与により増体率が低下することはない(図1)。
  • LIC37を2回経口投与したあと、カンピロバクターに感染させた7日後の盲腸内容物中のカンピロバクター菌数は、LIC37投与群の方が未投与群より有意(P<0.01)に低い(図2)。
  • カンピロバクターに感染した鶏の腸内細菌叢の動態の変化を線形判別分析(LDA)の効果サイズ(LEfSe)で評価すると、LIC37を投与した群では、C. jejuniが減少し、投与したL. ingluvieiと、ヒトやマウスにおいて有益菌であるBlautia属のスコアが増加する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • LIC37が鶏腸管内のカンピロバクターを減少させる作用機序は解明されておらず、今後、解明に向けた更なる研究が必要である。
  • LIC37はタイ王国で飼育されていたブロイラーから分離した菌株であり、商用利用の権利はスラナリー工科大学(タイ王国)が保有しているため、日本では利用できない。
  • 日本国内で飼育された鶏からL. ingluvieiを新たに分離し本研究を進展させることで、鶏腸管内のカンピロバクター菌数を低減するプロバイオティクスの開発に繋がる可能性がある。

具体的データ

その他

  • 予算区分 : 交付金、文部科学省(科研費)
  • 研究期間 : 2023年度
  • 研究担当者 : 渡部綾子、岩田剛敏、村上愛斗(信州大学)、生井楓(東北大学)、佐藤隆(信州大学)、藤井匡(藤田医科大学)、栃尾巧(藤田医科大学)、Sutisa Khempaka(スラナリー工科大学)、下里剛士(信州大学)
  • 発表論文等 : Murakami A., Watanabe-Yanai A. et al. (2024) Front Microbiol. doi.org/10.3389/fmicb.2024.1491039